電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2004-01-01から1ヶ月間の記事一覧

リヴァイアサンとレギオンの怪物

佐藤亜紀の『1809年』は、一般流通してる近代肯定、革命肯定の学校歴史教科書では触れられない、ナポレオンを成り上がり者として憎んだ人々、伝統的貴族の側にスポットを当てた小説だが、いかにも一般受けは悪そうで、実際あまり読まれてなさそう(日本では…

革命は神と人間の戦いだった?

物語の舞台はフランス革命期。まだ読み始めたばかりだが、大雑把なストーリー概説によると、なるほど、笠井潔の『群集の悪魔』より納得できるかも知れない、とか思ってみたり。フランス革命を反キリスト教という視点から解釈し、伝統的王侯貴族の軍隊ではな…

怪物は我々自身だ?

「ガンパレードマーチ」他のゲームを製作したアルファ・システム社について一冊丸ごとまとめた『アルファ・システム サーガ』(力作です)を上梓した畏友から、同社のオリジナルコンテンツのひとつ「ヴァンシスカの悪魔」を、いかにもわたしが好みそうな内容…

人の世に万能処方箋なし

多分、ここでもう一段階、更に大局的な思考が必要なのだ。 例えば、一部で痴漢冤罪というのが問題になっている。ごく普通の善良なサラリーマンが電車に乗ってて、悪質な女子高生から「痴漢だ」と言われて、女子高生という弱者の人権に配慮した法制度の前に、…

差別を認めるが自分ではしない封建主義者

「『同和利権の真相』の真相」の呉智英インタビューを読む。 先日も書いたが、呉智英夫子は、戦後民主主義、人権真理教をさらりと相対化し「人権思想など信じる必要は無い」「差別はしても良いのだ」ということを軽々と言ってのけた先駆者ではあるが、それは…

洗脳というのは、自分からかかるものである!!

で、わたしは件の団体には加入しなかったが、その後『悪徳商法マニアックス』他ネットで、件の団体の元会員の告発の類を多く目にすることになった。 しかし、そこでちょっと違和感を覚えたのは、件の団体に愛想をつかした元会員の多くが、彼らもまた少なくと…

日本的世間に寄生した「アメリカンなニュービジネス」

世の中には、少なくとも公の場では「世間一般」とか「普通」とか「多数派」と呼ばれるものに合わせないといけない、というプレシャーが存在する。じつはその「一般」「普通」「多数派」というのも、その場においての「一般」「普通」「多数派」、つまりロー…

わたしが自ら「『イケてる』の犬」に屈した日

わたしは、いわゆるマルチまがい商法というものがゴキブリや蛆虫より大嫌いだが、残念なことに、それ自体が法的には違法なわけではないし、大抵その会員というのは、個々人で見れば、明るく積極的で、わたしなんぞより遥かに社会性のある好人物であることは…

悪徳商法一般は悪とされても固有名は言えない

先日読んだニュース記事でも、近年、ネットワークビジネスとかMLM(マルチレベルマーケティング)とか呼ばれる、いわゆる連鎖販売、俗に言うマルチ商法が、成人式を勧誘の場にする例が増えてきたとかで、これに注意を呼びかける声があった。しかし、公共…

『悪徳商法マニアックス』を殺した奴ら

著名サイトの『悪徳商法?マニアックス』がGoogleの検索に引っかからなくなったという。 http://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/ 多くの人々に各種悪徳商法の手口実例という有用な情報を与えてきたこのサイトは、私設サイトながら、ネット内にあって公共の…

羹に懲りて膾を吹きずぎたツケ

結局、自衛隊のイラク派遣はアメリカ一国の政治的利権のためじゃないのか、という議論が保守陣営の内部でさえウヤムヤのまま、同盟国の要請という形で、自衛隊の事実上の実戦軍隊化はなし崩しに進行している。 が、自衛隊が真に、国民を守るため危険を甘んじ…

ゴジラが出なけりゃ税金ドロボーか?

1月17日は1995年に阪神淡路大震災が起きた日で、この時の自衛隊の災害救助出動と、続くオウム・サリン事件で、時の首相でもあった村山富市委員長下の社会党(当時)は、なし崩しに自衛隊の容認に至った。 で、その社会党(社民党)に続き、共産党も自衛隊容…

名誉なき軍隊50歳

週刊文春の記事によると、イラク行き自衛官の「命の値段」死亡時の危険手当は一人あたま3億円で、イラクに来ている各国軍隊の中では一番高額だという。 こういう情報をもってして、あくまで自衛隊悪者説を信じたい一部の人々は「自衛隊は国民の血税とぬくぬ…

かつて『クロワッサン症候群』というベストセラーがあった。

80年代にキャリアウーマンの自立を煽った女性誌のひとつ『クロワッサン』を愛読してたOLが、軒並み嫁ぎ遅れになってるとかなんとか、そんな内容で、随分衝撃的な話題になった(らしい)。その後90年代初頭、今度は『結婚しないかも知れない症候群』という…

また、繰り返されるよくある話

昨年末に知ったが、なんでも「『三十代未婚女は(高学歴・高収入でも)負け犬か?』論争」というものがあるそうだ。酒井順子という人の書いた『負け犬の遠吠え』という本が大きな反響を呼んでるんだという。 で、年頭いきなり『AERA』でその著者と小倉千加子…

ところで、この対談では、

日清戦争(1894年)と日露戦争(1904年)の中間に起きた米西戦争(1898年)と日本の関係についての指摘が興味深かった。 山崎先生曰く、日本が支那大陸にかまけてる間に、この戦争でスペインからフィリピンやグァムを勝ち取ったアメリカの太平洋覇権が進行し…

日清日露戦争当時の日本の指導層は、

江戸時代の身分制度の枠内で価値観が教育された武家エリートで、当時の日本が正しく後進国であることも重々自覚してた。んが、大東亜戦争の頃の日本軍の指導層は、建前上は四民平等の価値観で育った成り上がりで、幕藩時代や日本が明らかに後進国だった時代…

『中央公論』を立ち読みしたら、

関川夏央と山崎正和が日露戦争100周年を記念して司馬遼太郎の『坂の上の雲』を論じるという対談をやっていた。 谷口ジローとのタッグによる漫画「『坊ちゃん』の時代」五部作で明治人の精神像についての新しい解釈を示してくれた関川は、一部で『坂の上の雲…

で、ちょい今さらながら『映画秘宝』の話

昨年、タランティーノを親友のように慕うウェイン町山を中心に、「キル ビル」を大プッシュしてきた『映画秘宝』に、「私が敢えて『キル ビル』を否定する理由」というコラムが寄せられていた。 内容はほぼ予想通り。曰く、タランティーノは確かに映画オタク…

廃刊も間近な『噂の真相』中森明夫コラムを読む

なんでも、最近、80年代ノスタルジーネタ(YMOに『POPEYE』に『ホッドドッグプレス』に漫画『To-y』にプレ・バンドブーム……とかって辺りのことか)が一部で流行になりかけてるというんで、それ関係のコメンテーターを求められるが、そもそも80年代的感性(相…

普遍性の有る洗脳、無い洗脳

何が言いたかったかというと、恐ろしく迂遠になったが、我々は日頃「洗脳」と聞くと、何か非常に非日常的で特殊なこと――閉鎖空間に監禁して薬物やら特殊な映像暗示で人の心を根本から変えるもの――とでも思っているが、オウムでも北朝鮮でも、一次的にであれ…

心の中までの更生とは……

しかし、刑罰制度ってのは真面目に考えれば不思議なもので、どうせ死刑にしてしまう犯罪者に対しても、そいつが心の中からその罪を悔いてから死ぬことを求める。 それは、法に携わる者にとって重要なのは、ただ物理的肉体的な処罰を行うことより、殺人行為が…

凶悪犯に善良な新妻は「豚に真珠」か

年明け『週刊文春』と『週刊新潮』を読んでちょっと印象の残ったのが、宅間守の獄中結婚の記事である。この凶悪犯との結婚という、傍目には理解不能な奇行としか思えないことをやってのけた女性は、「せめて彼を改悛させて人生を終わらせてあげたい」といっ…

マリア様のこころ――成り上がりは許さねえ?

と、そんなことを考えててふと思い出したのが、イタリアの独裁者ムッソリーニの話。なんでも、ムッソリーニが政権を取ってから、ファシスト党の連中は、気を利かせたつもりで、自分達の統領は実は貴族の末裔だとかいう歴史資料を捏造しようとしたのだが、ム…

地位と権力があっても手に入らないもの

たかがコバルト文庫じゃねえか、と言うなかれ。少女小説の読者には、現世じゃ実力の立身出世が見込めないから人間関係による解決(良い先輩や友人との出会い)の物語を求める、っていう構図は不滅だろう(無論、一方に実力で成り上がる物語もあるだろうけど…

薔薇様は非民主的

深夜アニメの『マリア様がみてる』を見る。『少女革命ウテナ』みたいに時代錯誤でバロックな学園をわざと演出でやってるなら楽しめるが、こいつは何だかな…。 しっかし、こんなことを大真面目に論じる奴は絶対に誰もいないだろうから敢えてわたしが大馬鹿な…

SFやファンタジーなんだから何でもあり、

魔法や超能力や万能サイバーメカで不都合は無し、というのは、想像力で現実を相対化したつもりの想像力の手抜きの最たるものである。 体を動かさず情報だけで何でも分かった気になれる当世、じつは、我々は肉体的五感や社会慣習などの限定された世界の中で生…

絶対にこれはリアルでない、

おかしい、と思えた。そんな、痛覚が無けりゃ、肉体の限界に気付かけず無茶なジャンプや着地とかしちゃうじゃん、せめて痛覚50%オフならわかるが。その辺に、作者の思考の根底にある、肉体嫌悪、精神だけ眼だけの存在になりたいという願望(まさにそれと、そ…

『空の境界』を読んだ(第四話まで)。

まあアマチュア時代の作品らしく説明くさくこなれてない生硬な感も否めないが、魔法やら超能力が気安く飛び交うお話ではありつつ、その概念の設定、例えば、呪いとかってのは、暗示とか社会慣習による刷り込みが嵩じたものである、というような、民俗学や文…

痛みを伴う改革(?)

WEB同人ノベルからCDドラマにまでなった