電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2016-01-01から1年間の記事一覧

回顧と展望

本年、何やってたんだよ? と言われるかも知れないので、今年後半の仕事の一部を説明。 『日本の神様イラスト大図鑑』(isbn:4800263050)、スサノオノミコト、建御名方神、猿田彦、熊野三神、菅原道真、蛭子神、などの項目を執筆。 『60分で名著快読 マキア…

本年、書き落としたことなど

トランプ大統領実現について一言。日本は天皇がいて良かった。もう日本は永久に選挙で国家元首を選ぶ共和制にはならないで欲しい。 『あまちゃん』劇中の「海死ね」が許されて「日本死ね」が許されない謎。「海死ね」なら日本一国で済まず全地球規模で不謹慎…

列外.『東離劍遊紀』

脚本:虚淵玄(http://www.thunderboltfantasy.com/) 本年、純粋に娯楽作品として接した中ではもっとも熱中した番組かも知れない。仮面ライダーの次は台湾の浄瑠璃みたいなもの(布袋劇という)に手を出すとか、虚淵の引き出しの広さは予想以上。登場人物が…

10.TVドラマ『精霊の守り人』脚本:大森寿美男

脚本:(http://www.nhk.or.jp/moribito/) とりあえず、やっと日本で「ファンタジー物=西洋風でないといけない」の呪縛を脱して、日本人の役者が演じて違和感ない作品がメジャーな形で放送されたことに喝采。久々に松田悟志の派手なアクションが観られたの…

9.映画『バットマンvsスーパーマン』

監督:ザック・スナイダー(http://wwws.warnerbros.co.jp/batmanvssuperman/) アメコミヒーローへの関心は低かったが、町山智浩による原作の紹介が興味深かったので観賞。当然「ただの人間のバットマンがどうスーパーマンと戦うんだよ?」と思っていたら、…

8.映画『帰ってきたヒトラー』

監督:デヴィッド・ヴェンド(http://gaga.ne.jp/hitlerisback/) 独裁者を生むのは民衆――というよくできたお話。ラストシーンでは現代ヨーロッパの排外デモが1930年代になぞらえられるが、ふり返ってみると、2010年代ではなく1960年代でも1990年代でも社会…

7.ルポ『インド独立の志士「朝子」』

笠井亮平:著(isbn:4560084955) 第二次世界大戦中、日本やドイツと連携していたチャンドラ・ボースらインド国民軍の義勇兵の顛末。インド国民軍の婦人部隊では17歳の女の子が隊長で大尉とか、ガンダムか何かのアニメみたいな話だが、動乱期の革命軍ではこ…

6.評論『「反戦・反原発リベラル」はなぜ敗北するのか』

浅羽通明:著(isbn:448006883X) 本書は左翼批判というより、動員が目的化した方法論の批判、「デモなどやらなくても政治が変われば結果良し」という話。その選択肢には、ロビー活動、外国勢力を引っ張り出す、ストライキなどのほか、究極的には暴動やテロ…

5.ルポ『戦争中の暮しの記録 保存版』

暮しの手帖編集部(isbn:4766001036) 本物の戦争経験世代が次々と亡くなる中、大東亜戦争の大義だの大局視点の政治思想論ではなく、庶民の実感として戦争はどうだったという視点は急速に忘れられつつある。本書は、NHKの朝ドラマで注目が集まった花森安治の…

4.映画『この世界の片隅に』

監督:片渕須直(http://konosekai.jp/) 『あまちゃん』の頃から、能年玲奈(のん)は兵庫県出身と聞いて、いずれ関西弁キャラを演じて欲しいと思っていた。広島は兵庫の2つ隣だが、劇中の広島弁の自然な上手さに舌を巻く。この人、日本全国どこの田舎娘を…

3.『シャルリとは誰か?』

エマニュエル・トッド:著(isbn:4166610546) この人、いっけんリベラル派のようでドイツ人には口汚いところとか微妙に性格が悪いが、着眼点はあなどれない。 伝統的宗教(カトリック)が排外主義の温床ではなく、むしろ「ヨーロッパ人でもアフリカ人でも同…

2.『ヘイトフルエイト』

監督:クエンティン・タランティーノ(http://gaga.ne.jp/hateful8/top/) 3時間近い上映時間がまったく退屈に思えなかった快作。ラストで主要登場人物は全員ろくでもない最期を遂げるというのに、一番激しく対立していた南部出身の白人と北軍の黒人兵が仲良…

1.映画『シン・ゴジラ』

監督:庵野秀明(http://www.shin-godzilla.jp/) なんか、2年ほど前に書いたこの文章(http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20140611#p2)が、結果的に本作品の予告みたいになった気分。 とりあえず、仮面ライダーとかウルトラマンみたいな長期人気シリーズが、…

2016年最後の挨拶とか年間ベストとか

申し訳ありません、年末年始は仕事が詰まってるんで今年のベストは簡単に済ませます。 というか、本年は無駄に忙しく仕事と関係ない読書とか映画観に行ったりとかの余裕がほとんどなかったので、実際に内容も薄いです。 1.映画『シン・ゴジラ』監督:庵野秀…

「バブルすごい」のディトピア

日経新聞の正社員様によると、デフレ不況は若者が消費しないせいらしい。 インフレ知らず悲観的…物価2%、ゆとり世代が壁 :日本経済新聞 http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei.com/article/DGXLASGF24H0E_V21C16A0SHA000/ 阿呆か。 日経新聞の正社員様…

『古事記』の時代にサザエさんはいましたか?

なんでも日本会議によると、日本の模範的な家族像はサザエさん一家であるらしい。 日本会議「理想はサザエさん一家」啓発 24条改正巡り 毎日新聞2016年11月3日 02時30分(最終更新 11月3日 12時49分) http://mainichi.jp/articles/20161103/k00/00m/040/159…

すべてのエンターテインメントはプロパガンダになり得る

急いでつけ加えておくが、わたしは今回、漫画や映画やアニメやゲームや小説などを「右翼的な作品」「左翼的な作品」に分ける気は一切ない。というか、それは一番不粋でつまらん行為である。 作品が娯楽として面白いか面白くないかと、ウヨ的かサヨ的かは関係…

こんな『シン・ゴジラ』はいやだ!

もし仮に、「右翼的なエンターテインメント」と「左翼的なエンターテインメント」を、それぞれ純粋に徹底するとどうなるか? ○純粋に右翼的なエンターテインメント ・権力、体制はつねに正義である ・もちろん主人公はつねに体制権力に忠実な優等生 ・職業軍…

ヒロイズムの否定しかできない左派の愚

このブログでは毎度のように周回遅れで後出しネタだが、今さらこの辺の話について。 https://twitter.com/kabutoyama_taro/status/770565856199790592 『シン・ゴジラ』に限らず、ここ数年というもの、自衛隊ともコラボした『ガールズ&パンツァー』だの『ゲ…

また再録

かつて雑誌『TONE』第2号(2005年6月刊行)に執筆した原稿。 ■「戦争」を描いたヴィジュアル作品レビュー10 (1)映画『ゴジラ』(1954年)監督・本多猪四郎 【水爆が生んだ怪獣は、日本だけを襲う祟り神】 怪獣ゴジラが最初に銀幕に登場したのは、まだ戦争の記…

妄想

ところで、本作に登場しなかった今上天皇はどうしていたのだろうか。政府は退避を進言するだろうが、お優しい明仁天皇のことであるから、311の時から考えて、まずは「都民を置いて一人だけ逃げるわけには行きません」と発言しそうである。さらに都民に対し「…

「個としての人物」を描かないことで成立した傑作

で、公開から2週間も経つからもうネタバレも気にせず今さら『シン・ゴジラ』の話。 全体の印象 上映開始15分ほどで登場人物のあまりの多さに閉口し、名前と役職名を覚えることを放棄する。そして30分ほどして「ああ、これ岡本喜八の『沖縄決戦』と『日本のい…

ゴジラ対あまちゃん(ウソ)

――ときて、『ゴジラ対あまちゃん』があるとすれば、こんな感じか(入浴中に湯船に浸かって考えた妄想の類) 20XX年、復興が進みつつあった北三陸に、アキの祖父忠兵衛の乗った遠洋漁業の船が北太平洋で遭難し、生還は絶望的との報が届く。 ほどなく、ゴジラ…

ぼくのかんがえたさいきょうの「宮藤官九郎脚本のゴジラ」

オールド特撮オタクとしては、庵野秀明がゴジラの新作を撮ると聞いたときは少なからず期待した。そのとき脳裏をよぎったのは、若い頃の庵野らが1980年代当時に製作した『八岐大蛇の逆襲』とか『帰ってきたウルトラマン』のイメージだったのだが、劇場で予告…

こんな文豪ストレイドッグスの新キャラはいやだ

三島由紀夫:異能力「仮面の告白」 ところ構わず自分の腋毛を見て欲情 内田百間:異能力「件」 人虎ならぬ人面牛に変身 田山花袋:異能力「蒲団」 敵を蒲団でスマキにする 正岡子規:異能力「病床六尺」 敵を四畳半に閉じ込める 小林多喜二:異能力「蟹光線…

宮沢賢治はラノベ作家になり損ねたニート

別冊宝島『宮沢賢治という生き方』(isbn:4800254256)が刊行。当方は今回、鉱物、音楽、星、農、岩手の郷土などに触れた冒頭カラー口絵と、宮沢賢治の少年時代、女性関係、法華経信仰、晩年のサラリーマン生活などの生涯を追った第1章を担当。 清貧でも自…

カルトの「魅力」とは何か?

――と、以上のような理屈を幸福の科学の会員にぶつけても、たぶん効果はない。人間には、ネット上の名前も顔も知らんどこかの誰かの批判より、直接に面識のある仲間(同じ信者)の言うことの方を信じる心理がある。 これはカルト宗教に限らず、右や左や上や下…

宗教の分類は教義より信仰の実践形式

熊本震災の発生以降、また過剰な「不謹慎狩り」が続いているようだが、幸福の科学の地震便乗商売はもうちょっと批判されていいだろう。 http://togetter.com/li/963539 大川君にとっては、人がばんばん死ぬ災害も自説を宣伝する利用素材でしかないらしい。地…

くり返されるよくあるはなし

熊本での地震発生後、予想通り「被災地で朝鮮人が以下略」デマが発生したという。 ハイハイ、5年前の東日本大震災の時もありましたね、「中国人や韓国人が被災地で物資略奪」系デマ。 それで当人の主観では善意100%のまま裏取りもせずツイッターの内容を受け…

ぼくのかんがえたさいきょうの少子化対策

以上を踏まえて、わたしが考える有効性の高い少子化対策は「家業」の復活である。 少子化の発生以前は職住一体が当然であり、職住分離が家事と育児の困難の元凶だ。したがって、自宅で家事や育児をしながら仕事のできる環境を推進すればよいのだ。 だから、…