電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

グッとこない左翼

某所でも書いたが、今の日本の左翼がダメなのは、左翼陣営にキャラの立った「男」がいないという問題である。例えばかつてなら、松本清張のほか、浅沼稲次郎竹中労みたいなパワフルな左翼男オッサンというのがいたのだが、今の日本左翼は完全にヒロイズムをみずから否定しているよーにしか見えない。
今の社民党は、男はいらんと言わんばかりの土井おたかと清美タンと瑞穂タンの三枚看板だし、左側の挙げる論議がセクハラ規制DV規制ストーカー規制にジェンダーフリーと男ばかりが悪者扱いのものばかりでは、いったい男の左翼はどーしろというのだ?
今月『正論』には座談会記事に千葉真一が登場して武士道を語り、『諸君!』の座談会記事には松本零士が登場して宇宙開発を語っている。これを安易な保守オヤヂ雑誌の人気取りパフォーマンスと貶めるのはたやすい、その一方『論座』では「グッとくる左翼」と称して、雨宮処凛が登場である。悪いけど俺は雨宮処凛ではグッとこねーよ。
『諸君!』の座談会記事で松本零士人工衛星スプートニクの思い出を熱く語っている。以前も書いたがスプートニクが打ち上げられた当時、素朴に「ソ連は未来の国」と思った少年は多数いた。
思えば、かつて「未来」を提示すんのは、むしろ左翼の側の専売特許ではなかったか? 小松左京は元共産党員だったし、中村真一郎による怪獣映画『モスラ』の原作は反核小説だ。手塚治虫もある時期共産党と相性が良かったのは、根底に「科学主義」があったからではないかと思われる。日本の初期SFと左翼がけっこう親和的だった理由には、ある時期まで自民党に代表される日本保守は農村中心だったのに対し、左翼側は進歩史観を掲げ、また、戦後日本の文学者にも、戦中の皇国史観の反動で科学主義に傾倒した者が多かったということが考えられる(そういや実際、大江健三郎筒井康隆は仲が良かった)。
とにかく日本左翼は今、「面白いもの」「カッコよいもの」「夢」を保守陣営に取られてる事実を率直に考え直して頂きたいものである。
(※参考再掲「モテへん野党男」↓)
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20031007