電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

8.エッセイ『島に免許を取りに行く』

星野博美:著(isbn:4797672382
本書は「40過ぎた文筆業の女が自動車免許を取る」ただそんだけの話である。
若いころは何でも新しいことを学ぶ気概がある、定年退職したぐらいの年齢になって第二の人生を始める人もいる。が、建前上は働き盛りの40代というのは、ルーティンで慣れた仕事をこなすばかりで、案外と新しいことに挑む機会もない。
地方では20歳前後ぐらいで免許取得は当然という場合が多い。それからすると「何をたかが免許ごときで」と言われそうだが、体より頭を使う仕事をずっと続けててアラフォーにもなると、相当に身体感覚が鈍る。10歳も20歳近くも下の人間と混じって学校に通い、失敗をくり返すというのは相当に恥ずかしい……そういうことを、女性で堂々と書いてくれているのだから頭が下がる。
わたしも自動車免許を持たん人間なのだが、改めて気づかされた(じつは当たり前の)ことは多い。自分で車を運転できれば、電車やバスが通ってる以外の場所に行ける、自動車は文字どおり個人の身体の延長なのだ。
ところで星野さんは、福岡など九州西北部の人間が本当に、強調語の方言で「ばり○○(例:今日はばり暑かぁ等)と言うのは聞いたが、「ちかっぱい○○(例:今日はちかっぱい暑かぁ等)」というのは聞かなかったという。ちなみにこれは「力いっぱい」の短縮形です。