青木雄二プロダクション:編著(isbn:4594607330)
青木雄二亡き後もスタッフの手で続くシリーズの一篇で、帝国金融の設立者・金畑金三の青年期の話。
敗戦後、関西の焼け跡で育った金畑金三は、在日部落の正男、永中との衝突を経て鉄クズ拾いのアパッチに参加、ヤクザと渡り合って銭道への基礎を築く……って「仁義なき戦い」+「ガキ帝国」かよ!?
戦後の貧しい中、最下層の人間がいかに生きてきたかがエゲツなく描かれるなか、話はしだいに戦後の裏面史にも広がり、政財界のフィクサー児玉誉士夫や乗っ取り屋の小佐野賢治がモデルの人物も登場。
相変わらず絵柄はあの青木雄二のタッチだが、なにげに表現力も高い。
たとえば12巻160ページ、乗っ取り屋の「尾佐野」が、新興ヤクザの横山を睨みつけるシーンは、上から見下ろすアングルに文字どおり両者の力関係が暗示され、最後のコマでは画面を大きく占める尾佐野の黒い服の不気味な存在感が強烈。14巻83ページ、第153話の表紙は地面に転がる拳銃と手の絵だけで、金と自由を求めて敗れ去った男の哀調を見事に漂わせている。