電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

続・歴史の捏造について

この手の、政治や軍事の大局の話ばかりで現実をわかった気になって、庶民の生活実感の歴史とかを知らん(学ぼうとしない)人間がドヤ顔すると、ろくなことにならない。
しばし前、ひどい歴史の捏造を目にした。

昔は20代のOLでも純朴な女性が大半だったが、性的に穢れるようになってから純朴さが失われた。
そこで80年代には女子大生ブームが起こったが、すぐに女子大生も穢れた存在と見られるようになった。
そこでさらに90年代には女子高生ブームが起きたが、これもすぐに穢れたイメージに。
結局、00年代に入って女子中学生以下のロリブームが起こり、今に至る。

元を辿れば、成年女性が軽々しく股を開くようになったから、仕方なく男性は低い年齢へどんどん趣向が変わっていったわけで、ロリ問題を男のせいだけにはできんと思うんだわ。
https://layer13.tumblr.com/post/162079518209/

何この大ウソ。1980年代当時にはすでにロリコンブームってあったのを知らんのか(当時はミドルティーン〜ローティーン女子の裸も平然と雑誌に載っていた)。
さらに以前、1950年代の「太陽族」を描いた映画には、現代のヤリサーと同じく都内の一流私立大学生が10代女性をナンパしまくる場面が出てくるし、高校生の〈桃色遊戯〉を描いた〈性典映画〉なんてのもあった。これらはすべて石原慎太郎の脳内で創作されたワケではなく、当時の現実の流行風俗を取り入れた作品だ。
時代が進むほど女が純朴でなくなったとかドヤ顔で書いてあるが、むしろ戦前とか明治時代とか前近代とか時代をさかのぼるほど、貧困のため幼い女の子が今の小学生くらいの年齢で女郎屋に売られたとかいう話がゴロゴロある。田舎の村じゃ夜這いが通例、お祭りの夜には10代でも乱交とか通例だった。赤松啓介の著作でも5、6冊読んで出直してこい!!
歴史に無知なうえに男のロリコン性癖を相手のせいにするとか発想自体サイテーじゃねえか。
――実際、こうした政治や戦争の大局ではなく、民俗学的な庶民大衆の生活実態の歴史というものは記録に残されにくい。しかし、こうやって衣食住だの色恋だの性風俗だののデテールを無視してドヤ顔で世の中を語っていると、いずれとんでもない錯誤に陥るし、それこそ伝統への冒涜を招きかねない。
もしこの調子で、終戦時に5〜10歳ぐらいだった世代さえも死に絶えた後、「戦時中も終戦直後も日本人の子供は皆たらふく食べていた」、「疎開先でイジメなど一切なかった」、「中学生も勤労動員で働かされたとかウソ」となったら、そのへんの時代の苦労を題材にした藤子不二雄Aの『少年時代』などの傑作も意味がわからなくなるし、敗戦直後に「私のパンだけ白いのは困る。国民の配給のと同じにしてくれ」と語った昭和天皇のお心もぶち壊しではないか。