電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

秋の生存報告

夏の間完全にブログを放置してたら深夜に友人から「パソコン壊れたか? それとも死んだか?」と電話が掛かってきた。
単にまた仕事が激烈に忙しかっただけである……と書くと、よほど一生懸命働いてたようだが、自分が無能なので調査や執筆に無駄に時間が掛かったというだけだ。
7〜8月はほとんど、起きる→エアコンつけっぱなしで原稿執筆→図書館に行って資料を探す→帰って食事→資料を眺めてネタ探しと執筆の続き→寝る(繰り返し)、という毎日だったが、いくら調べてもわからず、書けないものはある。
不惑にして「できない仕事は引き受けるな(結局相手に迷惑が掛かる)」と学んだ。

わたしがTwitterに出遅れた理由

夏の間、それこそ一日140文字くらいで仕事と関係なく思いつくネタはあったが、Twitterなどやっていると編集者に見られて「そんなもん書いてるヒマがあれば仕事しろ!」と怒鳴られるのではないかと怖くて、Twitterには手を出せなかった。
ついでに、この機会に前々からの感慨をひとつ述べる。
『PLANETS Vol.7』のゲーム特集(ミニコミ誌とは思えぬ内容密度量)でも触れられていたが、昨今はツイッターSNSソーシャルゲームなど、24時間365日、コミュニケーションのツールと接するのが流行らしい。ゲームの『ラブプラス』なんてわざわざ仮想の人格と24時間365日つき合う物がバカ売れしている。
わたしは、人からたとえば「金貸してくれ」とか「こういうことで困ってるから助けてくれ」とか、具体的な用を言われたら、ぜひ相手の役に立ちたいとは思う。
しかし、具体的な用はなくても毎日小まめに挨拶や現状報告を交換するような「人間関係のための人間関係」の自己目的化ツールというのは、拘束されるようで好きになれない。でも、こんなこと考えてるから、世間から外れるんだろうなあ……。

本年前半の仕事

最近に刊行されたもので執筆参加した仕事の一部を挙げると以下の通り。
・『世界のスパイ 秘密ファイル』(isbn:4569674372
明石元二郎ゾルゲ、キム・フィルビーなど近現代の世界のスパイと関連事件を解説。刊行後ちょうどアメリカでロシアのスパイ網摘発が話題になったが、売上には寄与したのか……。当方はCIA、FSB(旧KGB)、内閣調査室など世界の諜報機関の項を担当。欧米では長い間、スパイは軍人ではなく外交官に近い存在だった。派手なスパイ映画とは裏腹に、インテリジェンスとは地道な作業の積み重ねなのだ。
・『裁判長! 桃太郎は「強盗致傷」です!』(isbn:4522429347
ここ数年、日本や世界の神話伝承の本の仕事と、裁判員や法廷傍聴の本の仕事を何冊もやったが、まさにその両者の合体企画。つまり、昔話や童話の中の事件を現代の法律で裁いたらどうなる? という、大マジメにふざけた思考実験である。
当方は、桃太郎(鬼に対する強盗致傷)、金太郎(刃物の不法所持)、浦島太郎(玉手箱を贈った乙姫の過失傷害)、花咲かじいさん(発掘物の横領)などの項を担当。このほか、猿かに合戦(集団殺人)、ハーメルンの笛吹き男(児童誘拐)など、監修を担当してくださった弁護士の小林剛先生の柔軟かつ真面目な法解釈もあり、一見バカバカしいようで意義深い法律的考察が行なわれている。
夏の間やってた仕事は年内に刊行の予定。