電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2015-01-01から1年間の記事一覧

列外(ワースト).TVアニメ『ガッチャマンクラウズ インサイト』

製作:タツノコプロ(http://www.ntv.co.jp/GC_insight/) 2013年放送の前作『ガッチャマンクラウズ』は、結局「ネットで直接参加民主主義になれば万事解決ユートピア実現」とでも言いたげな、余りに脳天気すぎる展開が鼻についた。製作と放送のタイムラグな…

10.ルポ『奇蹟』

曽野綾子:著(isbn:B000J8UNK0) 本年2月、アパルトヘイト擁護のごとき発言で叩かれた曽野だが、スクールマーケットの浅羽通明辻説法で「曽野の作品でもこれだけは本当に凄いぞ」と勧められた一冊。1973年刊行の作品だ。 第二次世界大戦の末期、ナチスの収…

9.ルポ『スエズ運河を消せ』『ナチを欺いた死体』

デヴィッド・フィッシャー:著(isbn:4760140204) ベン・マッキンタイアー:著(isbn:4120042995) 呉智英夫子が書評で2冊並べて紹介していた第二次世界大戦の裏話。 『スエズ運河を消せ』は、英国のマジシャンが軍に協力して北アフリカ作戦に参加し、はり…

8.評伝『近世快人伝』

夢野久作:著(isbn:4168130460) 幻想小説『ドグラ・マグラ』ほかの作者としての夢野ではなく、右翼壮士・杉山茂丸の息子としての夢野の本領が発揮された明治から昭和の人物論集。 なかでも、玄洋社をつくった頭山満の盟友で、薩摩長州藩閥の独裁に反発し続…

7.映画『黒部の太陽』

監督:熊井啓(http://movie.walkerplus.com/mv22183/) ご存じ三船敏郎と石原裕次郎が共演した60年代の映画。数年前のリバイバル上映はうっかり見逃して、今ごろやっとDVD視聴。 作品の本題は戦後の黒部第四ダム建設の話なのだが、劇中では戦前の黒部第三ダ…

6.評論『世界の辺境とハードボイルド室町時代』

高野秀行×清水克行(isbn:4797673036) 『謎の独立国家ソマリランド』(isbn:4860112385)の辺境ジャーナリスト高野と、日本の中世史を専門とする歴史民俗学者の清水のクロスオーバー対談。途上国の生活習慣とかには「日本も昔はそうだった」という点が非常…

5.映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

監督:樋口真嗣(http://natalie.mu/eiga/pp/shingeki_movie06) 原作ファンには絶不評な本作だが、わたしは5年前に原作を初読して以来、ぜひとも実写特撮映画としてこの作品が観たいと思っていた。原作者の諫山創が『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対…

4.映画『ルック・オブ・サイレンス』

監督:ジョシュア・オッペンハイマー(http://www.los-movie.com/) 2013年に取りあげた『アクト オブ キリング』(http://www.aok-movie.com/theater/)の姉妹編。インドネシアで1965年に起きた反政府派大虐殺の「9月30日事件」の下手人たちを追及する話だ…

3.『GHQと戦った女 沢田美喜』

青木冨貴子:著(isbn:4103732075) 終戦直後の混乱期、占領軍の兵士が日本女性に産ませた「GIベビー」の捨て子のため孤児院を設立したお嬢様の一代記。 明治期から戦前に軍需産業などであこぎに儲けまくった三菱財閥(岩崎家)が敗戦によって没落する過程を…

2漫画『卑怯者の島』

小林よしのり:著(isbn:409389759X) 戦時中の日本兵が特攻や玉砕をいとわなかったのは、愛国心とか八紘一宇の精神なんてご大層な大義のためではなく、かといって郷土愛とか家族愛が全部でもなく、結局のところ"目の前の戦友"を見捨てられないという感情だ…

1.映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

監督:ジョージ・ミラー(http://wwws.warnerbros.co.jp/madmaxfuryroad/) これを挙げるのは凡庸だけど、やはりインパクト最大。方々で語られ尽くされてるけど、何も考えず娯楽作品として観ても、内容についていろいろ考えても奥が深い。 この作品でわたし…

2015年最後の挨拶とか年間ベストとか

なんだかずっと間が空いても年末だけは更新が定例化してきて申し訳ないですが、とりあえず今年の年間ベストが以下。 1.映画『マッドマックス4』監督:ジョージ・ミラー 2.漫画『卑怯者の島』小林よしのり 3.ルポ『GHQと戦った女 沢田美喜』青木冨貴子 4.映画…

現代の木村鷹太郎 爆誕!

余談その2。なんだか武藤議員への非難はSEALDsを「利己的」と批判した件に偏っているが、わたしは、それに同意するかは別として、件の発言は「一個人の感想」の範囲と思う。 それよりずっと問題だと思うのが、武藤議員が過去に「稲作は日本から朝鮮半島に伝…

三島由紀夫好きの腐女子っているんですかね?

以下は余談。しばし前に「日之丸街宣腐女子」って同人誌を出す人がいないかなあとバカなことを考えたが、もし武藤議員のゲイ疑惑が事実だった場合、今後は腐女子に大人気になったりするのだろうか? さて、世の腐女子の大多数は、あくまで第三者目線の観客と…

続・人間心理の逆説について

武藤貴也議員のホモ買春疑惑が発覚後、以下のような言説が散見された。 保守・右派がゲイというセクシャルマイノリティなのは矛盾ではないか 差別反対を唱えるリベラル派がゲイだから武藤議員を叩くのは矛盾ではないか いずれも随分と偏見的な見方だなあとい…

おまけ(最近の仕事)

8月8日に刊行されたダイアプレスの『日本洗脳計画 戦後70年開封GHQ』(isbn:4802300654)に寄稿。 占領軍VS戦後新興ヤクザVS三国人の抗争についてとか、占領下で自民党が共産党に対抗させるために構想した「反共抜刀隊」とか、児玉誉士夫が右翼やヤクザを動…

ネトウヨが耳をふさぎたいお言葉

「我国の新領土における土民、新附の民に対する統治官憲の態度は、はなはだしく侮べつ的圧迫的なるものあるやに思はれ、統治上の根本問題なりと思う」(1931年1月) 『昭和天皇語録』(講談社学術文庫)20p 「指導的地位はこちらから押し付けても出来るもの…

不都合な昭和天皇

少し古い話になるが、今年の春に別冊宝島で『実録 昭和天皇』(isbn:4800236878)という本の仕事に関わった。昭和天皇の生涯を取りあげた写真ムックで、当方が担当したのは、だいたい戦後の1960年代中から晩年までだ(昭和天皇が東大全共闘や三島由紀夫の割…

きみと世界の戦いでは世界に支援せよ

先週このような報道があった。 「中国が超大国になる」と考える人の割合、日本は主要国で最低 http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150702-00000003-wordleaf-nb この記事と同じ内容の詳細は『Newsweek』7月7日号に「アジアのお騒がせ大国が世界で求心力…

あたなたちの中で罪のない者のみが石を投げよ

またも何を今さらな話だが、元・酒鬼薔薇聖斗こと少年Aの手記をめぐる論議について。 http://www.france10.tv/social/5184/ 神戸少年連続児童殺傷事件の加害元少年の手記を受け止められない現代日本社会の闇 わたしは『絶歌』なる件の手記は読んでないし興味…

「昔は良かった」はどこまで遡れるか

現代のウヨ「日本は戦前の精神に回帰せよ」 戦前の右翼「日本は明治維新の精神に回帰せよ」 明治時代の右翼「日本は維新以前の武士道に回帰せよ」 江戸時代の国学者「日本は古事記・万葉の精神に回帰せよ」 奈良時代の日本の支配層「今の日本は未熟だ。唐の…

オタとウヨの相性について再論

これも少々今さらな話だが、少し前にウンザリした議論。 http://togetter.com/li/836856 さやわか × 野間易通 × 東浩紀「オタク批判はヘイトなのか──艦これ、サブカル、カウンター」まとめ まず、ここで野間易通は「オタクとキモオタは違う」と述べており、…

無用の用

例によって出遅れた話だが、文部科学省が進めてる「人文社会科学系は廃止」の話について。 わたしは無学歴底辺の見本みたいな人間なので、大学のガクモンについて云々するなどまるで蝿が獅子の群れの運営に意見するようなお門違いも甚だしいものだが、「文系…

「津山三十人殺しは明治憲法のせい」ですか?

以前も述べたが、わたしは1990年代当時から改憲の必要を意識していたけれど、現在の自民党の改憲案に対しては「9条に侵略に対する自衛権を加える以外に余計なことをするな!」と言いたい。 どうも自民党は憲法が国民の道徳を矯正する装置と本気で思い込んで…

オタクにとっては史実の悲劇性さえ同人誌のネタ

上記の3年前の記事で書いてたような「男の子の好きな趣味と少女キャラの融合」といえば「艦これ」なのだが、この作品が「正義で強くてカッコいい大日本帝国バンザイ!!」という心情の育成に一役買ってるかというと、少し疑問を感じてきた。 どうも艦これのシ…

うれしくない予言的中

3年前にこういう文章を書いて「ヒロインはネトウヨ少女」という作品の登場を予言してたら、ご存じの通り、なんか青林堂から『日之丸街宣女子』ってのが出てる。 http://www.garo.co.jp/comic/hinomaru.html すぐ翌年とか逆に10年後とかなら「驚くべき予言的…

放火魔と呼べばかっこいいが炎上屋と呼ぶとダサい

深夜に『攻殻機動隊ARISE』を観てたら、なんか超ベタな解釈が思い浮かんだ。 今回の劇中にはファイア・スターターなる電脳ウイルスが登場し、これに感染した者は疑似記憶に操られて集団で他者を攻撃する。 劇中バトーはあっさりこれに引っかかって、自分が経…

鬼畜米英撃ちてし止まん

『花燃ゆ』は観てないが、かような事件があったらしい。 NHK大河 「日米戦争」を「日仏戦争」に歴史修正していた http://www.news-postseven.com/archives/20150616_329418.html 記事中にある、下関戦争で最初に攻撃した相手をアメリカではなくフランスに差…

2015年の中東

フランスでイスラム教を風刺した漫画家が、赤報隊事件のようにテロられた件について。 もしこれを日本に置き換えて、皇室の先祖とされる「古事記」や「日本書紀」の神々がフランスで下品に面白おかしく描かれたら、わたしは大して愛国心の強い人間ではないが…

2050年の妖怪

仕事とか関係ない身辺雑記をひとつ。 先日の深夜の2時頃、録画した『ジョジョの奇妙な冒険』を観ていたら、「コンコン」とドアを叩く音がする。扉を開けると大家さんが立っていて、ちょっと来てくれと言う。 大家さんは推定70代かと思われる女性で、二階建て…