電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

オタクにとっては史実の悲劇性さえ同人誌のネタ

上記の3年前の記事で書いてたような「男の子の好きな趣味と少女キャラの融合」といえば「艦これ」なのだが、この作品が「正義で強くてカッコいい大日本帝国バンザイ!!」という心情の育成に一役買ってるかというと、少し疑問を感じてきた。
どうも艦これのシリアスな二次創作を読むと、描き手が真面目に史実を意識した作品ほど、艦娘が前世で撃沈されたときのトラウマだの、仲のよかった僚艦が一人また一人と撃沈してくだの、戦争が終わって平和になったけど戦友は還ってこないとか、史実の陰惨さを反映した悲劇性の高い作品が多い。
そりゃ敗北した戦争で、連合艦隊のほとんどの艦は沈んだんだから当然だが。
しかしその手の二次創作をみてると、遠からず「特攻隊が題材のBL」が流行するまであと一歩じゃないか? と本気で思う。
おい待て! 石を投げるな! 歴史物で腐女子が大好きなネタといえば、それこそ『三国志』の武将とか新撰組とか、男ばっかりが結束した集団での、戦友、主従、ライバル等々の男同士の熱い絆と相場が決まっている。
いわんや、新撰組やら白虎隊のように、劣勢に置かれて滅びを前にした集団の結束と来れば、悲劇的なロマンを感じる人は多い。青春をなげうって滅びゆく大日本帝国に殉じる若い男たち同士の熱い友情――三島由紀夫なら大喜びしそうだ。
海軍出身の笠原和夫も、男ばかりが乗った軍艦じゃホモセクハラは日常茶飯事だったと証言してる。倒錯退廃耽美系の女子にはナチスも人気が高いが、講談社選書メチエの『愛と欲望のナチズム』(isbn:4062585367)を読むと、実際にSSは男ばかりで結束した男尊女卑的な集団だったのでほっとくとホモの巣窟になる気風があり、ヒムラーは何かと親衛隊員に女をあてがうよう計らっていた模様。
当然「特攻隊員のBLなど英霊への冒涜!」と怒る向きもあるだろうが、帝国海軍の艦艇を女の子にして「被弾大破したら服がポロリ」なんてゲーム内容のうえ、そのキャラの百合二次創作を楽しんでいる時点で、文句を言う資格はないだろう。