電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2013-01-01から1年間の記事一覧

回顧と展望

相変わらずブログ更新が滞ってばっかりですが、細かい仕事をいろいろこなしてます。秋季以降に携わった主なものが以下。 ○『「千夜一夜物語」の謎を楽しむ本』PHP研究所(isbn:456981509X) アニメ『マギ』のヒットにかこつけて、アラビアンナイトでのマルジ…

列外『あまちゃん』

順位とかつけたくない、毎日の食後の一服のように楽しんだ作品。 もともと自分は決して熱心な朝ドラファンでもクドカンファンでもなかったが、畏友中川大地氏が毎日つけてた各話解説ツイッターに影響されて結局全話視聴。 現代東京のJKが田舎の年寄りや海女…

10.イオンモール福岡

本年1月末、父親の十三回忌で九州を訪れたついでに、高校生当時に住んでいた福岡県糟屋郡粕屋町まで行き、自転車で通学してた高校まで約10kmの距離を歩いてみた。 この一帯の風景はほとんど田んぼと炭坑跡地しかないド田舎である。ところが、田んぼの真ん中…

9.『雲形の三角定規』

ゆずはらとしゆき:著(isbn:4575237701) 90年代の漫画業界を描いた青春小説。いわば団塊ジュニア世代のオタク版『まんが道』。 主人公やその友人は、高田馬場の専門学校に通い、落合の古い木造アパートに住み、『ロケット』という名の雑誌に寄稿……と、どう…

8.『土と兵隊』『麦と兵隊』

火野葦平:著(isbn:4101008019) 仕事のため読んだ本の中で印象深かったのが本作。戦後に書かれた戦争文学は、大東亜戦争の結末を踏まえているためか、軍隊に批判的な物が多いが、まさに戦時中リアルタイムに戦場を見た人間の視点で書かれているのが、日中…

7.漫画『僕だけがいない街』

三部けい:著(isbn:4041205573) ピザ屋でバイトする30歳手前の売れない漫画家の主人公が、少年期(1980年代末)に起きた猟奇殺人事件の犯人を追うサスペンス。著者の三部けいは過去作『カミヤドリ』の乾いたミもフタもなさが結構好きだったが、今回はかな…

6.ドラマ『カラマーゾフの兄弟』

原作は19世紀ロシアでの、貧困やら、古い世代と若い世代の衝突やら、世の中に蔓延する暴力だの残酷だのを描きつつ、「ロシア正教のキリスト教ヒューマニズム」で無理やりうまくまとめていた印象。しかし、これを取っ払って現代日本に持ってくると、いかにミ…

5.『パシフィック・リム』

中年特撮オタク冥利に尽きる快作。深海から出現する怪獣の群れに対峙する各国の巨大ロボット軍団という設定は、なんだか石川賢の漫画版『ゲッターロボ號』のようだ。 本作での「怪獣」は、たとえば初代のゴジラが持っていた「核兵器の脅威の象徴」というよう…

4.『むかし原発いま炭鉱』

熊谷博子:著(isbn:4120043436) 311福島原発事故のあと、政府は今でこそ原発を守ろうとしちょるが、ずぅーっと前には時代の変化でかんたんに石炭産業を切り捨てたやないか、と思ったものだ。 筑豊・三井三池炭田のルポである本書には、今も昔もまるで変わ…

3.『ジャンゴ』

例によってタランティーノの「殺されるのは悪党ばっかりだから、いくら残酷でもぜんぜん後味が悪くない脳天気バイオレンス映画」。 西部開拓時代のアメリカで白人農場主にいじめられる黒人奴隷による正義の復讐、という大義名分を悪用していつもの不謹慎ノリ…

2.『風立ちぬ』

すごく評価しづらい作品。 要素だけを言えば一個人的にはもう俺の好きな物だらけ、技術バカのマッドサイエンティスト、飛行機とかのメカ、戦前の旧制高校エリート的空気、大正期から昭和初期の生活感もツボ。 これがマニア向け模型雑誌の『モデルグラフィッ…

1.『謎の独立国家ソマリランド』

高野英行:著(isbn:4860112385) アフリカ大陸の東端にある、世界の多くの国が未承認の自称独立国ソマリランドの旅行記。 とにかく「国家」の概念について目からウロコがはがれまくる。 旧ソマリアは1991年に中央政府が崩壊して以来、海賊やテロリストが跋…

2013年最後の挨拶とか年間ベストとか

例によって、書物やら映像作品やらの一個人的に気に入った物の年間ベスト。今年もまたいい加減な取り合わせです。 1.ルポ『謎の独立国家ソマリランド』高野英行 2.映画『風立ちぬ』監督:宮崎駿 3.映画『ジャンゴ』監督:クエンティン・タランティーノ 4.ル…

「戦前」は天国ではない

スクールマーケット主催の浅羽通明辻説法で、山本太郎の天皇直訴が話題に上がった。 つまみ食い的にポイントを挙げると、大日本帝国憲法の時代も田中正造が行なったような天皇直訴は「世間の耳目を惹くパフォーマンス」でしかなかったという。 明治憲法で天…

無視される「普通の多数派」

少し前、某所で「なぜ、片山さつきのような東大法学部卒・元大蔵省官僚の超エリートが、2ちゃんねるまとめのハムスター速報なんぞにハマってネットで下流層の過激意見に同調するのか?」について私見を述べたら、やたら「目から鱗だ!」と驚かれた。 つまり…

みんな「学校」になってしまった。

例によって中年オヤジのド素人丸出しなバカな見解(さあ笑え!) 昨今、現実には少子化であらゆる学校の縮小が進んでいるのに、アニメやライトノベルでは「巨大な学校」という設定をやたらよく見かける(それも魔法やら超能力やらSF的ファンタジー的ガジェッ…

最近の仕事 マニアのための歴史解説

10月末に発売された『あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS』(isbn:4163767703)で、劇中の用語解説「アマペディア」の一部、対談記事の構成などを担当。 本書は『あまちゃん』自体の画像は一枚も使ってないし、評論中心なのではっきり「マニア向け」なん…

なんとなくブログ開設10周年

このブログを開設したのが2003年の11月24日だったので、10周年となった。

自民党に提案 「生活勅語」ってどうよ

相変わらず日本国憲法の改憲が論議のネタになっている。 http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf 自民党の改憲案では、家族は大事にしようとか、国旗や国家を尊重しようとか、道徳的なご高説と国民の義務がけっこう盛り込まれている…

夏の風物詩 日本の陸軍と海軍

毎年、8月の終戦記念日近くになると、テレビや雑誌は戦争特集が世に溢れる……で、わたしが友人らと一緒にやってるライター集団・グループSKITの編著『日本陸軍と日本海軍の謎』(isbn:4569813437)が刊行。 全体の構成は以下のような感じ。 ○序章 日本軍の謎…

地方の男

最近NHKドラマ『あまちゃん』のミズタク(松田龍平)が一部で非常に人気らしい。 劇中では前半、かなりデフォルメ&美化されてるとはいえ、地方で地道に漁業や鉄道や潜水土木に従事する人間を描いていた中、ミズタクだけは嘘くさい作り物感があった。大体、…

私がモテないのはどう考えても自分が悪い!

某所でかような論議を目にした。 「レイシストは女にモテる」 http://togetter.com/li/526583 この手の論議は「どんな女」にモテるのかを具体的に明らかにしなければ、永久に妄想のぶつけ合いの域を出ない。 確かにリベラルなインテリ女性であれば、男根原理…

ハラキリは別腹

しばし前「日本の人権は中世なみか?」という話題が出た。 国連で「シャラップ」日本の人権大使、場内の嘲笑に叫ぶ(2013.6.14 08:14) http://sankei.jp.msn.com/world/news/130614/erp13061408180002-n1.htm http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/…

大日本帝国憲法は廃止されていなかった!!

在特会の高田誠会長は「日本国憲法は無効」と主張してるそうで、自民党にも同意見の議員(西田昌司)がいるそうだ。要するに、アメリカ軍の占領統治下での法令なんだから占領が終わった時点で無効という話らしい。 この「とんち」を思いついた人はドヤ顔だっ…

よくあるはなし

少し前、以下のようなコピペを見かけた。 【トルコが日本に要求する事項】 ・省エネ、インフラ整備をお願いします ・原子力協定を締結して下さい ・装備共同開発しませんか ・猪瀬都知事の発言は水に流すのでオリンピック開催地候補として正々堂々とお願いし…

ヨーロッパという鏡からアジアをふり返るために

PHP文庫『日本人が知らないヨーロッパ46ヵ国の国民性』(isbn:4569760325)が刊行。 当方は今回、導入部の「ヨーロッパのなりたち」、「東ヨーロッパ」、「北ヨーロッパ」、「南ヨーロッパ」を担当(つまり「西ヨーロッパ」の章以外の全部。一時は全部わたし…

「身体」と「仕事」を握っているヤンキーの根強さ

ところで、先にも触れた日本人の「ヤンキー的メンタリティ」はなぜ根強いのか? 文系インテリの多いネット世論では、非合理的な気合主義、先輩後輩などの上下関係、暴力的制裁などのヤンキー的なノリは毛嫌いされる。うん、気持ちはわかる。 ヤンキー的な気…

パッチワークされてきた「愛国」

浅羽通明『ナショナリズム 名著でたどる日本思想入門』が文庫化(isbn:4480430512)。昨年やってた浅羽公開講座が再開というのでようやく読む。 ちなみに、2004年に旧版が出た当時の感想文はこちら。 なにしろ9年前の刊行だけに、各章末の「読書ノート」コー…

児童ポルノ規制は「反日の陰謀」か?

以前、現代のオタクが政治的保守傾向が強いのは、1990年代後半に「ジャパニメーションは日本が世界に誇る文化」という神話が広まって、日本と自分を同一視する人が増えたから、という説を書いた。 http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20121112#p1 このためか、…

大東亜戦争は侵略戦争か?

安倍晋三首相は靖国問題について「アメリカの国立墓地に南北戦争の南軍兵士も埋葬されてるが、そこに参拝すれば南軍の掲げた奴隷制の支持になるのか?」(要約)と述べた。 これはまったく違和感ない。どこの国の戦没者もひとしく戦没者だ。中共の人間が独裁…