電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

児童ポルノ規制は「反日の陰謀」か?

以前、現代のオタクが政治的保守傾向が強いのは、1990年代後半に「ジャパニメーションは日本が世界に誇る文化」という神話が広まって、日本と自分を同一視する人が増えたから、という説を書いた。
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20121112#p1
このためか、一部では、児童ポルノ規制は「日本のコンテンツ産業を潰そうという反日の陰謀」という物語を意地でも信じたがっている人が結構いる。
だが、本当に保守政党の政治家や財界人が「漫画やアニメやゲームは日本の誇る産業」と思ってくれているかは疑わしい。

フォーチュン・グローバル500 2012年(日本編)
http://memorva.jp/ranking/forbes/fortune_global_500_2012_japan.php

こちらを見ると、世界の企業で売上ベスト500に入る日本企業68社のうち、オタク産業系の会社は一社もない(ソニーの連結決算の「一部」にはPSの売上も入ってるだろうが)。
この中で売上1位のトヨタ自動車の年間総収入は18.8兆円、最下位の東京ガスでも1.8兆円。一方、ゲームやアニメDVDや漫画関連で大手クラスの、任天堂バンダイナムコ、角川ホールディングスの最新年の売上は、それぞれ6354億円、4872億円、1474億円だそうだ。
http://www.nintendo.co.jp/ir/finance/2012_04.html
http://www.bandainamco.co.jp/ir/financial/data1/index.html
http://ir.kadokawa.co.jp/company/outline.php
ゲームやアニメや漫画を貶める気は一切ないけれど、オタク産業が日本の経済を支えてる」というのはさすがに思い上がりだ。
ちなみに、自民党が擁立した渡邉美樹のワタミグループの連結売上は1578億円だという。
http://www.watami.co.jp/corp/gaiyo.html
バンダイの売上がワタミの3倍なんだから、もう少しは日本の財界でオタク産業系の会社の発言力が大きくなってもよさそうなものだが、実際にはなかなかそうなってくれない。
いかに保守系のオタクにとっては認めたくない話でも、表現規制推進派は自民党など保守政党に多く、規制反対派は民主党社民党など左翼政党に多い、これは事実だ。
かつては長らく「左翼になる奴=本ばっかり読んでる暗い奴」「保守になる奴=軍隊みたいなきびしい上下関係や体力主義が性に合ってる奴」という図式だった。
で、左翼はむかし言論弾圧された被害者意識が根強いから、やたら「表現の自由」とか叫びたがる。一方、一定年齢以上の保守系の政治家は、石原慎太郎や元ラグビー部員の森喜朗元総理みたいに、漫画ばかり読んでるようなネクラは軽蔑して、女は筋力でナンパするという体育会系価値観が多数派。麻生太郎みたいな人はむしろ貴重な例外だろう。
――ま、わたしがこんなことをいくら書き連ねたところで、自分の信じたいことしか信じない人に届くことはないのであろうけれど。