電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

大東亜戦争は侵略戦争か?

安倍晋三首相は靖国問題について「アメリカの国立墓地に南北戦争の南軍兵士も埋葬されてるが、そこに参拝すれば南軍の掲げた奴隷制の支持になるのか?」(要約)と述べた。
これはまったく違和感ない。どこの国の戦没者もひとしく戦没者だ。中共の人間が独裁者毛沢東の命令で戦った兵士を追悼したり、ロシア人が独裁者スターリンの命令で戦った兵士を追悼するのも彼らの勝手だ。だから、日本人だけ悪者扱いしないで欲しい。
だが、大東亜戦争侵略戦争だったのか? これについては、そもそも「侵略戦争だから悪い」というのが戦後の発想だと書いたことがある。
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20081201
大東亜戦争は、日華事変(日中戦争)の延長に起きた。アメリカが中華民国政府を支援していたからだ。1940年以降の日本の東南アジア占領が侵略と言うなら、英、米、仏、蘭ら連合国も同罪でなければおかしい。もともと西欧列強がミャンマー、フィリピン、インドネシアベトナムなどなどアジア諸国を侵略して植民地にしていたところに日本軍が乗り込んだのだから、これは「すでに侵略された土地の横取り」である。
(しかも英仏など連合国側の西欧列強は、戦後の1960年代まで、英領ボツワナや仏領アルジェリアなどアフリカの植民地を維持し続けた)
では、大東亜戦争に至るまでの流れはどうか? まず日華事変(日中戦争)は、北京はずれの盧溝橋での中華民国軍と日本軍の衝突から起きている。
このとき現地にいた日本軍は、1900年の北清事変(義和団の乱)のあと、清国内の日本人を保護するため北京議定書で駐留を認められた部隊だった。
正当に駐留していた部隊と現地軍の衝突なら、少なくとも発端は侵略ではないと言うこともできる。だが、その後、日本軍は当時の中華民国の首都である南京を占領して汪兆銘政権を樹立させる。ところが蒋介石の政府は降伏せず、重慶に遷都して抗戦を続けた。
ここでちょっとたとえ話をしよう。現在の在日米軍日米安保条約に基づく正当な駐留部隊だ。もし仮に、横須賀だか厚木だかの在日米軍が偶発的に自衛隊と衝突しても、原因次第では、在日米軍側は「侵略ではない」と主張できるかも知れない。だが、そのまま在日米軍が東京を占領して親米派の首相を擁立、それまでの日本の首相は降伏せず、長野県の松代に遷都して徹底抗戦を呼びかけたら?
今の日本人では在日米軍を「敵」には想像しにくいか……では、たとえば仮に、北海道の一部にソ連軍(ロシア軍)が(駐屯自体は正当なものとして)駐留していて、それが上記と同じことをやったら? 俺は断固「ロスケの侵略者出て行け!」って言うよ!!
そもそも、駐留自体が正当でも、外国の駐留軍がもとの駐屯地より外に武力で占領地を広げれば、そら現地の人間からは「侵略」に見えるだろ? という話。