電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

慰安婦問題はブラック企業問題である

ワタミの渡邉美樹が自民党から立候補するとかいう。なかには「渡邉擁立は自民党内の反日勢力の陰謀」とかいう物語をいまだに信じたがってる人間もいるが、自民党の支持者を自認する人の間でさえも「ワタミといえばブラック企業」と見なして嫌う人は多い。
そうかそうか、民主党や左翼が嫌いな人たちでもブラック企業は許せないか。
日本残酷物語』(isbn:4582760953)あたりを読めばわかるが、明治から昭和前期の北海道開拓やら鉱山労働では、現代のブラック企業と変わらない、契約書に偽りだらけの詐欺雇用や奴隷労働がいくらでも横行してた。従軍慰安婦問題ってのは、戦争の問題ではなくそういう雇用の問題と見るべきじゃないのか?
古山高麗雄が戦時中の軍隊経験を書いた『二十三の戦争短編小説』(isbn:4167291061)などには、慰安所についての回想が何度か出てくるが、とにかく「徴用」だと言われて現地に来てみたら慰安婦の仕事だった、と語る慰安婦の話があった。
慰安婦問題がこじれるのは「従軍慰安婦の『強制連行』」という言葉のせいではないか? 「強制連行」ではなく「詐欺的雇用」とか「奴隷的契約」と言ったらどうか?
現代においてさえ、求人情報は「週休2日 一日8時間労働」と書いておきながら、実際には「残業代ゼロで土日出勤が当然」なんて詐欺雇用はザラにある。それで、戦時下のせっぱ詰まった状況下、内地の人間より一段階低く見られてた植民地の人間相手に、労働基準法を遵守した契約書通りのホワイト雇用が徹底されていたなんて、いくらなんでも性善説解釈に過ぎるというものだろう。
わたしはさすがに、政府の正式な役人や憲兵がピストルで植民地の女人を脅して慰安婦にさせたなんてベタな話があったとは思えない。だが、政府の役人や憲兵の意向を受けた民間業者が、詐欺的契約で女性労働者を搾取していたという話なら大いにありそうだ。
ブラック企業ワタミを憎む愛国者よ、この点にちょっと想像力を働かせてくれ。