電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2014-01-01から1年間の記事一覧

回顧と展望

私事を書いておくと、本年は転居したので無駄に金が出てゆきましたが、そのあと刊行された『「右翼」と「左翼」の謎がよくわかる本』(isbn:4569819370)が発売後すぐに1万部増刷、さらに追加で5000部増刷の快挙となった。自分が企画ネタを出した本でこれだ…

列外

本年の「順位とかつけたくない、正しく娯楽として消費させてもらった作品」。 『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(←長い…)は、この手のヒーローオールスター物では登場人物が多すぎて散漫になるところを、今回はうまく絞…

10.映画『GODZILLA』

(公式:http://www.godzilla-movie.jp/) 怪獣映画としてはまったく正統な作り。序盤、原発事故で妻を見殺しにせざるを得なかった技術者が、執念で事故の原因(怪獣の出現)に迫る展開など、今の日本じゃなかなかこういう演出ができないのが悔やまれる。 本…

9.映画『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』

(http://movie.walkerplus.com/mv17404/) まだチェルノブイリ原発事故さえなかった1985年、原発内部で働く労働者にスポットを当て、つい近年まで長らくDVDも出てなかった幻の作品。池袋文芸座で観賞。 原田芳雄が原発労働者の仕切り役で、倍賞美津子がその…

8.漫画『新黒沢 最強伝説』

福本伸行:著(isbn:4091856888) 2006年にきれいに完結した黒沢がまさかの復活。まず第1巻は「承認欲求こじらせ中年」のイタさにひたすら頭を抱える。この歳になってモテたいとか思ってどうする? という気もするが、実際、旧シリーズでは異性絡みの話が抜…

7『無冠の巨匠 本多猪四郎』

切通理作:著(isbn:4800302218) ゴジラシリーズをはじめとする東宝特撮映画で、怪獣ではなく人間の出てくる本編パートに関わってきた本多猪四郎監督の評伝。じつに20年前に予告されてやっと完成。本書の原形になった『宝島30』の記事はもちろん覚えてまし…

6.『アル中病棟』

吾妻ひでお:著(isbn:4781610722) これも昨年末の話題作だが、本年の年頭にやっと読了。 わたし自身は大酒飲みではないのだが、「社会から脱落しかけたまま、死なない程度には生き延びている」感じのリアルさはグサグサくる。 終盤で筆者の吾妻が「貧乏す…

5.映画『ハンナ・アーレント』

(公式:http://www.cetera.co.jp/h_arendt/) 昨年末の話題作だが本年の年頭に駆け込みで観賞。 劇中、50歳過ぎにもなってやたら仲の良いアーレント夫妻の姿がなんか微笑ましい、イマドキの若いリア充カプにはない良さだ。この夫妻はユダヤ系なので、戦前に…

4.エッセイ『指導者とは』

リチャード・ニクソン著:(isbn:4168130096) 1970年代のアメリカ大統領ニクソンが、自分の会った各国指導者について書いた人物評。対象はチャーチル、ドゴール、日本占領下のマッカーサー元帥、吉田茂、旧西ドイツのアデナウアー、フルシチョフ、周恩来、…

3.映画『ゴジラ』1954年版

これについては6月11日の日記参照 http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20140611#p2

2.映画『アクト オブ キリング』

(公式:http://www.aok-movie.com/theater/) 1965年代にインドネシアで起きたスハルト将軍のクーデター「9月30日事件」のあとに行われた、共産党支持者と華僑への大虐殺のドキュメンタリー。 つまりは右翼版ポル・ポトだが、劇中でインタビューを受けてい…

1『ムーミンの生みの親 トーベ・ヤンソン』

トゥーラ・カルヤライネン:著(isbn:4309206581) わたしが小学生のころ愛読していたムーミンシリーズの原作は、意外に暗い面が少なくなかった。『ムーミン谷の彗星』などでは大災厄がムーミン谷を襲い、『ムーミンパパの思い出』では孤児だったムーミンパ…

2014年最後の挨拶とか年間ベストとか

なんかサボりっぱなしの更新ですが、例によって年末だけは頭の整理も兼ねて年間ベストの公開です。本年の収穫といえるものは以下。 1.伝記『ムーミンの生みの親 トーベ・ヤンソン』トゥーラ・カルヤライネン 2.映画『アクト オブ キリング』監督:クリスティ…

オタク差別・ロリコン差別は正当な差別か?

このブログではいつものことだが、あえてわざと時機を逸した後出しジャンケンを書く。 7月頃、岡山小5女児監禁事件のせいでまた数年ぶりにオタク差別問題が盛り上がった。で、例によってメジャーなマスコミは美少女キャラがばんばん出てくるようなアニメ好き…

ぼくのかんがえたさいきょうのてきとうな花子とアン

『週刊文春』9月11日号での中園ミホ×林真理子対談を読むと、『花子とアン』脚本を担当している中園も、史実の蓮子関係の方がずっと面白いことは認めているが、かといってそっちを丁寧に描けば花子の存在感が霞むし、子供からおばあちゃんまで幅広い層が見る…

女の戦争

こちらでわざわざご指名があったので『花子とアン』の話をする。 NHK朝ドラ「花子とアン」より面白い? 史実「村岡花子と宮崎龍介」 http://b.hatena.ne.jp/lotus3000/20140907#bookmark-223553881 村岡花子がドラマとは異なり史実ではむしろ戦争協力者だっ…

地方の男・大正篇

すでにあちこちで指摘されているが、現在放送中の『花子とアン』に登場する、白蓮こと蓮子様と不倫の恋で結ばれた宮本龍一のモデル宮崎龍介は、上記の宮崎滔天の息子である。 滔天については一昨年にちょっと詳しく述べた。 http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/…

「右翼」も「左翼」も変動相場制

かつて1980〜90年代当時、「『右翼』『左翼』という言葉は死語になる」などと言われたものだった。ところが、21世紀のネット世論では、いまだにこの語句がぽんぽんと大安売りで使われる。 そりゃそうだ、世の中全体がより保守的になっても、より革新的になっ…

日本人なら一度は観とけ

1945年のゴジラ 昭和29年の国民共通の記憶 初代の『ゴジラ』は、この歳になってまた大画面で観る機会があるとは思わなかった(20年あまり前、早稲田のATCミニシアターで観賞)。この作品についてとにかく結論だけ一言で述べると「日本人なら一度は観とけ」で…

このラインナップ、今は本当に21世紀かよ!?

2週間そこいらの間に、『キカイダー REBOOT』『THE NEXT GENERATION パトレイバー』『ゴジラ』(60周年記念デジタルリマスター版)を続けて観るという、中年特撮オタク冥利につきる過ごし方をする……って、丸一年前にも想像つかんかった組み合わせだ。 キカイ…

日曜朝の教育効果ばつぐんだ

『仮面ライダー鎧武』が2クール目に入って以降、急激に面白く感じる。が、当方と同じような中年特撮オタクは古典的勧善懲悪と強いヒーローを愛する保守的価値観の人間が多く、虚淵玄みたいな変わり者の脚本家にはアンチが根強いらしい。しょうがねえなあ。 …

あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします。