電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

このラインナップ、今は本当に21世紀かよ!?

2週間そこいらの間に、『キカイダー REBOOT』『THE NEXT GENERATION パトレイバー』『ゴジラ』(60周年記念デジタルリマスター版)を続けて観るという、中年特撮オタク冥利につきる過ごし方をする……って、丸一年前にも想像つかんかった組み合わせだ。
キカイダーは正しくロードムービーにはなっていたが(アンドロイドの男+ヒロイン+男の子の逃避行という組み合わせは『ターミネーター2』じゃないかと気づく)、ジローがサイドカーに乗らずミツコ&マサル姉弟とバスで一緒に移動してると甚だしくマヌケに見える。TVのキカイダー本編(1972年)で、ジローの目的がミツコ&マサル姉弟を守ることなのにいつも別行動なのは、しょっちゅうプロフェッサー・ギルの笛の音で乱心して味方のはずの相手を襲っちまうからなんだろうなあ、という雰囲気がまたジローの孤独感を印象づけてたんだが、2時間もない映画でそこまで再現は無理か。ハカイダー誕生の背景を、キカイダーを破壊することよりプロフェッサー・ギル光明寺博士へのライバル心の産物としたのも尺を考えたら妥当な判断かと思われ。
パトレイバーは、『紅い眼鏡』(1987年)以来、押井守の実写映画だけは欠かさず観てる身としては、アニメ以上にアニメ的なオーバーアクション、無駄にくどい台詞回し、多数の観客が元ネタのわからなそうなパロディなど、「またか!」「ああ、来た来た!」と思われる安心の安定感。特車二課整備斑が不眠不休で働かされる場面とか、『トーキング・ヘッド』(1992年)劇中でのアニメスタジオのスタッフ達の姿にそっくり。
可能な限り特撮に頼らず、凝ったカメラアングルや無駄にシリアスな演技で馬鹿馬鹿しいことをやるという演出は、実相寺昭雄鈴木清順岡本喜八らの1960〜70年代の作品の影響を濃厚に感じるのだが(『紅い眼鏡』が鈴木の『殺しの烙印』(1967年)にインスパイアされてるのは押井自身が当時から語ってる)、ニコニコ動画の「ニコニコ大百科」には、鈴木清順の項目も岡本喜八の項目もない。そのへん戦後映像文化サブカルチャーの基礎教養じゃねと思ってる人間としては、もはや俺も若者と話の通じないジジィかとへこむ。
関係ねえけど、現実の世界じゃパトレイバーのアニメをやってた1989年(昭和天皇崩御し、天安門の虐殺と同日にイランのホメイニ師が死去し、松下幸之助手塚治虫美空ひばりその他も死去、宮崎勤の逮捕と日米構造協議とベルリンの壁崩壊とノリエガ&チャウシェスクの失墜)から25年だが、パトレイバーの世界は「1998年」という設定なので、劇中では15年しか経ってない。それ考えると千葉繁演じるシバ整備班長は老けすぎではないか、まあ、苦労が多かったのだろう。