電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2.映画『アクト オブ キリング』

(公式:http://www.aok-movie.com/theater/
1965年代にインドネシアで起きたスハルト将軍のクーデター「9月30日事件」のあとに行われた、共産党支持者と華僑への大虐殺のドキュメンタリー。
つまりは右翼版ポル・ポトだが、劇中でインタビューを受けている当時の虐殺実行者たちはまったく悪びれてない、その後のインドネシアはずっとスハルトの反共独裁政権が続き、いわば「勝った戦争」なんだから当然という感じ。殺害後はマリファナをやって気分を紛らわせたとかケロリとした顔で言ってる。
印象深かったのは、虐殺シーンを再現した劇中劇ドラマのメイキング部分。村を焼き討ちする場面で、民兵団の役が実行当時そのままにノリノリで「共産主義者を殺せー!!」と絶叫するが、あまりに凶悪そうに演技して気まずくなり、真面目にやり直す姿に苦笑。出演者の子供らは演技とわかってても本気で泣き出してる。
再現演技の最中、虐殺を実行した男の仲間がいきなり「じつは自分の義父も華僑だから殺された」と言いだし、義父の遺体を祖父と一緒に埋めた話をする場面も衝撃的だった。旧知の人間がその件について「知らなかった」と言うが、言い出した方は「隠してもいなかった」と答える。どうやら「虐殺当時のことはお互い言わないという暗黙の約束」が何十年もあったようで、非常に気まずい雰囲気。
まさに今の日本で在特会が望んでいることの延長にこの風景がある。