電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

5.映画『ハンナ・アーレント』

(公式:http://www.cetera.co.jp/h_arendt/
昨年末の話題作だが本年の年頭に駆け込みで観賞。
劇中、50歳過ぎにもなってやたら仲の良いアーレント夫妻の姿がなんか微笑ましい、イマドキの若いリア充カプにはない良さだ。この夫妻はユダヤ系なので、戦前には収容所送りと戦争を経て生き延びたゆえの絆だろう。
途中でイスラエルが捕らえたナチス戦犯アイヒマンの実録映像が出てくるが、やたらまばたきしながら、生き残ったユダヤ人による糾弾に「はぁ、何言ってんの?」という感じの顔をしてて、却って糾弾の証言をする側が白々しく見えてしまう。本当に凶暴な虐殺者というよりただの田舎役人にしか見えず、なんともやりきれない。
その気まずさをアーレントがあえて言語化すると、同じユダヤ系の旧友たちはアイヒマン擁護だと受け取って譲らない。結局、私怨は大きな動機となるが、哲学者は私怨を超えた人類に普遍的な問題を考えないとならないという話。
なーんとなく、この件↓に通じる問題を感じる。ま、こいつは自業自得だけどな。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41047
(ちなみに、「ネット上で表現活動している私人」に対する暴露記事なら、1998年刊行の別冊宝島『実録! サイコさんからの手紙』あたりにこれと同レベルの前例がいくらでもある)