電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

4.『むかし原発いま炭鉱』

熊谷博子:著(isbn:4120043436
311福島原発事故のあと、政府は今でこそ原発を守ろうとしちょるが、ずぅーっと前には時代の変化でかんたんに石炭産業を切り捨てたやないか、と思ったものだ。
筑豊・三井三池炭田のルポである本書には、今も昔もまるで変わらん図式の話が多い。
戦前の炭鉱労働者は、布団代、積立金、愛国貯金、税金などが引かれ、実際の支給額は3分の1だという(290p)、現代のブラック企業とどう違う? 経営陣が粉塵爆発事故の危険性を予見しながら何ら対策を打たなかったあたりは、まるで現代の原発事故と同じ。
かと思えば、戦後15年の1960年当時、40歳前後で三井三池闘争に参加した組合員の1人が、会社側についた第二組合との内ゲバに際して、軍隊にいたとき使ってたブローニング拳銃と実弾38発ほどを用意し、警官隊が撤退したので使わずに済んだ拳銃はそのあと土の中に埋めた(106p)、という話などは貴重な時代証言だ。
そんな本書でも、ゲラゲラ大笑いした箇所がある。老いたおばちゃん炭鉱労働者の証言だ。
「昔は大きな腹をかかえて坑内に下がりよったよ。『おい、もう休んでくれ! 坑内で子どもが生まれたら大ごとぞ!』ちて、役人はやかましゅう言いよったが『いいやないね! 坑内で死んで上がるもんはなんぼでもおるばってん、生まれて上がるとは縁起がよかろうがぁ』ちて、やっぱー体はきついでも下がりよった」(76p)
こげんな人たちが、煤と汗にまみれて今の平和で豊かな日本の土台を作ったんだよ!!