電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

「戦前」は天国ではない

スクールマーケット主催浅羽通明辻説法で、山本太郎天皇直訴が話題に上がった。
つまみ食い的にポイントを挙げると、大日本帝国憲法の時代も田中正造が行なったような天皇直訴は「世間の耳目を惹くパフォーマンス」でしかなかったという。
明治憲法天皇が絶対君主だったなどというのは幻想で、明治から戦前当時もまた天皇は時の権力者のお飾りであり、帝国大学法学部卒の人間の間では天皇機関説はむしろ常識、これを不敬と突き上げたのは近代法の知識などない無垢な庶民たちだった。
現代日本は腐敗・堕落していると主張するあまり戦前を天国のように理想化する人がたまにいるが、それは一部の左翼が北欧諸国を高福祉の天国のように言うのと同じ偏見だ。
しばし前、京都朝鮮学校に対する嫌がらせで学校側が勝訴した。それで「戦前ならあり得ない判決」「戦後の司法は左翼・在日に乗っ取られている」と主張する人は、大輝丸事件の裁判を知らんのだろうか?
一介の民間人が、極東ソ連軍の非道きわまる日本人虐殺への復讐を主張して私的に武装してソ連人を堂々とぶち殺したら、日本の国内法でハッキリ懲役12年の有罪になった。
当時のソ連は今の北朝鮮と同じく日本と正式な国交がなく、裁判官がソ連におもねる必要は一切なく、当時の世論には主犯・江連力一郎を愛国的人物と見なす者も多かった。それでも有罪になった。戦前でも敵国人相手なら何をやってもいいわけではなかったのだ。
逆に言えば、この判決は戦前の日本がまっとうな法治国家だったことを示している。
あと、一部の非モテは自分がモテんのは戦後の左翼フェミニズムのせいで戦前のような男尊女卑社会が破壊されたのが全部悪いと言うが、それこそ戦前なら体育会系価値観バリバリで、村の農作業や徴兵された軍隊での地味ぃ〜な行軍や労務に耐え得ないオタクでは、嫁をもらう以前に人間扱いもされんかった筈。
昔は昔で良いところも悪いところもあり、今は今で良いところも悪いところもあり、両方のいいとこ取りなど出来ない。それを望むことこそ歴史への冒涜ですよ。