電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

よくあるはなし

少し前、以下のようなコピペを見かけた。

【トルコが日本に要求する事項】
・省エネ、インフラ整備をお願いします
原子力協定を締結して下さい
・装備共同開発しませんか
・猪瀬都知事の発言は水に流すのでオリンピック開催地候補として正々堂々とお願いします

【インドが日本に要求する事項】
・インフラ整備をお願いします
・新幹線技術はフランスと比較、検討します
・経済面だけでなく、安全保証面でも協議、提携して下さい

UAEが日本に要求する事項】
・22億ドルの資金援助して下さい
・インフラ整備をお願いします
原子力協定を締結して下さい

【韓国が日本に要求する事項】
・7月に終結するIMF経由のスワップ(150億)を延長しろ
・デフォルト寸前の韓国経済を支援しろ
・円安誘導をやめろ
・2018年、韓国冬期オリンピック、雪が足りないから秋田県を使わせろ&資金援助しろ
従軍慰安婦のオバサン達に謝罪と賠償しろ
・独島(竹島)の不当な主張をやめろ
日本海に東海を併記しろ
靖国参拝するな
・教科書を捏造するな
・韓日トンネルを開通させる資金を出せ
・歴史的、地理的に見ても対馬は韓国領土だと認めろ

以上はすべて「事実の一側面」ではある。だが、いかにも恣意的な視点の切り取りだ。
そりゃ日本にいちばん距離が近くて、過去の戦争の件も含めて歴史上の接点が多いのは韓国なんだから、韓国からのウザい物言いがいちばん多いのは必然。日本から遠く離れたトルコやインドやUAEなんて、日本と領土利害の衝突もなければ戦争する機会もない。
そして「日本に対しては」穏健なインドだって、いちばんの隣国パキスタンとは何十年も血みどろの対立が継続中。国内じゃカースト差別に基づく人権侵害が横行してる(カーストの違いで結婚を反対されたカップルが焼き殺されたなんて話が今もある)。
同じくトルコも、隣国アルメニアからは過去の虐殺を責め立てられ、もう一つの隣国シリアとも険悪。さらに国内の少数民族クルド人には大弾圧をしてる。
つまり「韓国にとっての日本」が「インドにとってのパキスタン」や「トルコにとってのアルメニア」であり、「日本にとっての在日」が「インド内の下層カースト」や「トルコにとってのクルド人」なのだ。このコピペはそれをまったく捨象している。
無論、だからインドやトルコがひどい国だと言いたいのではない。韓国の肩を持つ気もない。だが、上記引用のような比較は、いっけん世界に目を向けて客観的なように見えつつ、じつは「日本に都合の良い部分」だけを切り取った自己中心的な見方だからいやらしい。
何も日本だけが隣国にけちをつけられる特別な被害者ではないのだ。
世界を「親日」と「反日」に分けるのはあくまで世界の中で日本人だけの都合。実際にあるのは「隣国と敵対する国」と「隣国とほどほどの所で友好的にする国」だ。
↑こう書けば「自分は日本人なんだから日本中心に見るのは当然」と言う人もいるだろう。うん、そんな自国中心主義を中国も韓国もアメリカも日本にぶつけている。みずから相手と同レベルになってもねえ……。残念なことに、世界は自国だけで成り立っているわけではない。そう、お互いに。