電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

オタとウヨの相性について再論

これも少々今さらな話だが、少し前にウンザリした議論。

http://togetter.com/li/836856
さやわか × 野間易通 × 東浩紀「オタク批判はヘイトなのか──艦これ、サブカル、カウンター」まとめ

まず、ここで野間易通は「オタクとキモオタは違う」と述べており、どうも昔から存在する鉄道オタクや切手マニアなどは前者だが、後者はエロゲーやエロ同人誌を買うような性的なものが消費の目的にになっている人間だとなるらしい。
しかし、そう簡単に両者が峻別できるものだろうか?
以前も述べたが、昨今では虚淵玄平野耕太みたいに、エロゲーシナリオライターやエロ漫画家あがりの優秀なクリエイターも少なくない。
野間が称揚するような70〜80年代のサブカルチャーにも「自販機エロ本文化」というものがあった。つまり「最低限エロが入っていればあとは編集者の趣味で何をやってもOK」のようなノリで、エロ雑誌に難解な思想だのオカルト趣味だのドラッグカルチャーだのの記事を書いていたクリエイターもいた。竹熊健太郎が、オウム真理教の同時代性を語った『私とハルマゲドン』などでその辺に触れていたと思う。
とりあえず、俺も今のまともなミリタリーオタクが艦これブームに怒らないのは不本意だけどw

価値相対主義が足りない!

また、野間易通の主張によると「価値相対主義ネトウヨを生んだ」ということになるらしい。ここで言う価値相対主義とは「彼の立場では彼が正しい/俺の立場では俺が正しい」「日本人成人男性に対する女性や子供や日本人以外のアジア人などのいわゆる弱者もまた『弱者という権威』になっている」ということだろうか。
ところが、わたしはむしろ価値相対主義を突きつめた結果、どうもネトウヨに全面同意ができなくなってしまった人間だ。
つまり、なんでネトウヨの皆さんは韓国と中国にしか興味ないんだ? 世界を見渡せば英国とアイルランド、ロシアとウクライナセルビアクロアチア、インドとパキスタン、トルコとアルメニア等々、歴史的に隣国とすげー仲が悪くてこじれてる例は多数ある。日本と中韓なんて、間に海があるだけだいぶマシじゃねえの? という方向に、相対主義的な考え方をしてしまっている。
要するに、わたしに言わせれば、ネトウヨの皆さんはむしろ価値相対主義が足りないのだ。自分が属する陣営(地元、国家、民族)をも相対化できてこそ本物の価値相対主義者ではないのか?
ただ、ここで右翼と左翼の思考の根本的な非対称性が問題になる。左翼は「中国のナショナリズムがくだらないのと同じように日本のナショナリズムも等しくくだらない」という相対主義を主張できるが、右翼は「ウチの国のナショナリズムだけは正しい」という自国絶対主義を唱えても矛盾がないからだ。
21世紀に入って以降、論壇で左派が負けっぱなしの根本的原因もこのへんではないのか? 相対主義は何でも同等に引きずりおろすが、自分が属する陣営(地元、国家、民族)は正しくカッコいいと言う方がそりゃ魅力的ですから。