電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

「昔は良かった」はどこまで遡れるか

現代のウヨ「日本は戦前の精神に回帰せよ」
戦前の右翼「日本は明治維新の精神に回帰せよ」
明治時代の右翼「日本は維新以前の武士道に回帰せよ」
江戸時代の国学者「日本は古事記・万葉の精神に回帰せよ」
奈良時代の日本の支配層「今の日本は未熟だ。唐のマネして律令制を入れよう」



なんでも最近の右派には「大江戸回帰派」の人がいらっしゃるという。「みんな『戦前に回帰せよ』とか言ってるけどオレなんか大江戸回帰だぜ、こっちの方が古いぞ(ドヤ顔)」というつもりなのだろうか、なんですかその中途半端さは。
江戸時代なんざ幕府が支那から借り物の儒教思想を広めた時代だぞ、水戸学派とかが尊皇攘夷を言い出したのも、「儒教の忠君思想に照らすと、幕府が朝廷から権力を奪っているのは忠義に反する」という発想の帰結だった。本物の右派なら支那文化の影響がなかった時代まで遡ってくださいよ。
もちろん、支那からの輸入品だった漢字も箸も屋根瓦も使用禁止、初期には高麗犬と書かれた神社の狛犬も輸入文化だから廃止、神社のお札やおみくじも道教のまねっこだから廃止、あと外来宗教の仏教も全部禁止――江戸回帰と言わずそこまで主張しなければ最右翼とか極右とか名乗る資格はない。
少なくともナチスは、キリスト教道徳を批判してゲルマン神話回帰を唱えてましたよ……あ、日本だと古事記の精神に回帰したら、近親婚とか親子兄弟で殺し合いとか一夫多妻がOKの乱れた世になっちまうか(ギャフン)