電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

現代の木村鷹太郎 爆誕!

余談その2。なんだか武藤議員への非難はSEALDsを「利己的」と批判した件に偏っているが、わたしは、それに同意するかは別として、件の発言は「一個人の感想」の範囲と思う。
それよりずっと問題だと思うのが、武藤議員が過去に「稲作は日本から朝鮮半島に伝来した」と述べていた件の方だ。
岩波新書『稲作の起源を探る』(isbn:4004305543)その他の資料をみる限り、現時点でいえるのは「稲作は朝鮮半島ではなく華南地方から直接日本に伝来した可能性がある」「あるいは朝鮮半島と華南地方の2ルートから伝来した可能性がある」というぐらいで、いずれも確定の学説ではない。ましてや日本から朝鮮半島に伝来した確実な証拠など発見されていない。だからまだ教科書に書かれていないだけで、不当な圧力のためではない。
それを国会議員という権威のある人間が平然とデマを書いて広めている。こちらの方が、主張内容が横暴でも一個人の感想の範囲とはいえるSEALDs批判よりタチが悪くないか?
この武藤議員の「稲作日本起源説」を目にしてわたしは即座に、戦前のトンデモ史学者木村鷹太郎を連想した。そういや木村鷹太郎の通称は「キムタカ」、武藤議員の名は略せば「ムタカ」だが、両者を結びつけたネタは今のところ寡聞にして目にしていないのは惜しいw
あと安倍政権が本年6月に「政策芸術」って言葉を挙げたときも即座に、ベンヤミンの『複製技術時代の芸術』に出てくる「政治の耽美主義」「芸術の政治化」を連想したのだが、同じことを考えた人は、当方の知る範囲では高井守氏ぐらいしかいなかった。しょうがねえなあ。