電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

7.映画『黒部の太陽』

監督:熊井啓http://movie.walkerplus.com/mv22183/
ご存じ三船敏郎石原裕次郎が共演した60年代の映画。数年前のリバイバル上映はうっかり見逃して、今ごろやっとDVD視聴。
作品の本題は戦後の黒部第四ダム建設の話なのだが、劇中では戦前の黒部第三ダム建設のときの悲惨な労働環境(掘削中に高熱を発する火山帯に当たり、ダイナマイトの自然発火やら熱水の噴出で作業員が300人以上も死亡)の話もしつこく描かれ、裕次郎の演じる主人公は鬼気迫る顔でこう語る。
「黒三は戦争のためだった、東洋平和のためだった。そう言って労務者に銃剣を突きつけた。今度は一体、何のためにって言うんです? また平和のためですか? 電力のためですか? 日本の繁栄のためにと言って、おやじは労務者を……青竹でぶった叩いて殺すよりもっと悪質だ」
実際、戦前の「黒三」と戦後の「黒四」の両方に関わった人間も少なくなかったようだ。この映画が製作された1960年代当時、土建屋の体質や労務者の待遇などなども含め、まだまだ戦前と戦後は地続きの空気だったという緊張感がよくわかる。