電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

わたしが自ら「『イケてる』の犬」に屈した日

わたしは、いわゆるマルチまがい商法というものがゴキブリや蛆虫より大嫌いだが、残念なことに、それ自体が法的には違法なわけではないし、大抵その会員というのは、個々人で見れば、明るく積極的で、わたしなんぞより遥かに社会性のある好人物であることはよく理解している、そう、誠に残念なことに。
先日、宅間守の獄中結婚について書いた時「洗脳というのは別に特殊なことでなく、単なる慣習的価値観の強制刷り込みである」という意味のことを述べた。わたしがそう痛感したのは、数年前、あるマルチまがい商法に一日付き合わされた体験からである。
正直に言う。わたしはこの時、一時的にであれ、うっかり本気で自分から件の団体の集会で積極的に高揚して「がんばるぞー」とか掛け声を上げていた。わたしを連れてきた友人の顔を潰すわけにも行かず、半分は演技で従ったふりをしていた、というのもあるが、初めて来た人間にも、その場で一緒に声を上げなければ仲間ずれになる、そんな自分はダサい恥ずかしい存在である、という場の同調圧力に逆らえなかったのだ。
これには恥ずかしい個人的事情もある。当時のわたしは「こんなオタクではいかん、積極的に社会にコミットして、古いアニメや特撮のビデオやエロ同人誌ばかりでなく、高級車や高級ブランド品にも興味を持ち、まんだらけや虎の穴をほっつくばかりでなく、ヴェルファーレで合コンとかするような人種にならなければならない」と、「義務感で」思っていた。で、ネクタイにスーツでばりばり働く件の団体は、少なくとも引きこもりのオタクとは対極にあるように見えてた……おい笑うな(泣)、当時はそれなりにマジだったのだ。