電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

日本的世間に寄生した「アメリカンなニュービジネス」

世の中には、少なくとも公の場では「世間一般」とか「普通」とか「多数派」と呼ばれるものに合わせないといけない、というプレシャーが存在する。じつはその「一般」「普通」「多数派」というのも、その場においての「一般」「普通」「多数派」、つまりローカルルールに過ぎないこともあるのだが、それでも、日本人にはそこから外れることを怖れる心理が強くあるのではないか。
阿部謹也氏は、西欧の個人主義の根には「唯一神と個々人の垂直な契約関係」というキリスト教文化の影響があるが、そういう背景のない日本人は、具体的な特定個人の指導者や組織に属するというより、その時に与している場、共同体、すなわち「世間」に従っているだけだと説く。これは仮説だが、マルチまがい商法というものは、そういう日本人の体質に非常にフィットしているのではないか? と思う。
実際、奴らの手口は日本的世間の構造によく順応というか依存している。新規会員には、まず、その郷里の親とか大学の同窓生に商品を売らせるのがお決まりだ、その辺が、情で口説いて売れる確実な客だからだろう。で、その次は叔父叔母に中学高校の同窓生だ。多くのMLMは「一人独立起業」を謳うが、その内実は、土着の地縁血縁、学閥にパラサイトした商売である。「MLMアメリカンなニュービジネス」とか言うのは真っ赤な嘘だ。