電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

悪魔の力で世界に平和をもたらす男

で、この手の「幻の作品」のひとつで、わたしが20年前から漠然と頭の片隅に引っかかって、当時「うわーこの映画一度観てみたい……でも永久に無理か?」とか思ってたもののひとつが、「空飛ぶ戦闘艦」であった。
これはジュール・ヴェルヌの「征服者ロビュール」と、その続編「世界の支配者」をくっつけて映画化したもので、「海底二万リーグ」のネモ船長を空に移したような、、飛行船を駆るおっさんが主役だという。この作品が中学生のわたしの脳裏に異様な想像力をかきたてたのは、当時の「SF怪獣怪奇映画大百科」とかそんな本に書いてあった、以下のような説明文(うろ覚えだからテキトー)による
「空中戦艦の艦長は、世界から戦争を無くすため、各国の軍隊に戦争を止めるよう呼びかけ、それが聞き入れられなければ爆弾を投下する」
何だコイツ!? 力づくで世界平和を実現か? 凄ぇ、志は立派だがやり方が完全に本末転倒で狂ってるじゃねえか!
――だが、記憶にある限り、小さい頃、最初になりたいと思った職業が「マッドサイエンティスト」だったわたしは、この設定に痺れたのであった(激マジ!!)
このロビュールと似たキャラクターに、水木しげるの「悪魔くん 千年王国」の主人公悪魔くん松下一郎がある……それこそ20年前、雑誌『宇宙船』で「一万年に一度の超天才悪魔くん松下一郎は、一切の貧困も苦もない地上天国を実現すべく、悪魔ベルゼブブを呼び出し云々……」という、「悪魔くん 千年王国」のあらすじを読み、中学生の脳裏に異様な想像力をかきたてられワクワクしたが、ニ、三年後に現物を読んだ時は、途方に暮れたものだった(が、それでも、その理想の挫折の物語という意味でも「悪魔くん 千年王国」は腐朽の怪傑作と思ってる)