電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

妄想によって実体より美化された「幻の作品」たち

少し前、2chの特撮板に、20年以上特撮オタを続けてる人間が集まるスレッドというのがあり、なんか独特の活況を呈していた。
83、4年頃というのは、それ以前からすればマイナーな特撮SF作品のビデオやらLDが出回りだした時期で(ちょうど、ガンダムで稼いだバンダイが、映像事業に乗り出してエモーションレーベルを立ち上げて一役買った)、むかしの「SF怪獣怪奇映画大百科」とかそんなので軽く触れられてるだけの「幻の作品」みたいなのを初めて見た時の思い出、みたいな話が結構あった。
大映の「虹男」だの、東宝の「電送人間」だの「マタンゴ」だのから、海外作品の「金星人地球を征服」だの、「海獣の霊を呼ぶ女」だの、そんなのだ。
「幻の作品」として前評判の高かった『マイティジャック』を実際見たら、特撮以外の本編物語内容のヘボさに驚き、こいつは「幻の作品」のままの方が良かったかもな、とかいう意見があり、これはわたしも、つい数年前やっと初めて同作を新宿TSUTAYAで借りたのを観て痛感したところであった(「怪奇大作戦」は実際傑作だったけどな)。
今やあらゆるマイナーなジャンルの珍作奇作にもヴィデオやDVDで観られるようになった作品が多いが、それにまつわるこの手の話は多い。なんか確か『映画秘宝』か何かでも、その手の、SFとかホラーとか伝奇ジャンルの「幻の作品」となってた「いれずみの男」を実際初めて観たら何じゃこれはというトンデモ作品だった、とかいう話を読んだ記憶がある。
昔のオタクにとっては、情報は少なかったが、それだけに「幻の作品」への想像力と渇望が大きな原動力になっていた一面がある。今となってはそれが懐かしいとも言える。