電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

「笑い男」たちよ、もちっと「巨悪」に向かってくれよ

その昔、太宰治が『人間失格』に、日本中の捨てられる弁当箱にこびりついてる米粒を集めることができれば、貧しい飢えた人々を救えるのに、とか、バカみたいにナイーブ(愚直)なことを書いてた。わたしも中学生頃から、似たようなことばかり考えてる。
よく新聞の社会面に、幼児や老婆に暴行を振るって捕まって「むしゃくしゃしてやった」と証言してるダサい犯罪者の記事が載るが、日本中のそういううだつの上がらない引きこもりオタクのダメ人間犯罪者の悪の暴力衝動を集めて、悪徳政治家や悪徳商法にふつけて善用できりゃ、世直しができるのに、と(浦沢直樹『MONSTER』のヨハンはこれに近いことをやってた)。
以前も書いたが、ネット上で巻き起こった株式会社ウェディング批判は、個々バラバラのネット住人が、誰かに命令されたわけでもなく自発的に、ウ社の商法、自作自演の自画自賛、批判サイトへの圧力はけしからん、と声をあげた点で、わたしは「笑い男」に似た痛快さを覚えたが、矛先が違うだけで、イラク人質三人へのバッシングも、実は同じ構造だということには途方に暮れる。
わたしもイラク人質三人自体には、そりゃ目つきとか態度とか、あんまり人間として共感はできないタイプと思える面はある。家族ぐるみプロ市民運動家っぽいのも好きでない(わたしは、革命や社会運動なんて親孝行と矛盾してなんぼ、と思ってるからね)。が、あの三人の救出に骨折った政府関係者当人でもない一般ネット住人の間から、あれほどのバッシングが起きたのはさすがに違和感を覚えた。自己責任論という理屈には一定の正当性はあろうが、現象としては、ただの個人を群集心理で下品に叩いてるのにしか見えないんだもん。