電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

普遍的「正しさ」「善さ」「カッコよさ」への志向

業務上の必要から(←便利な言葉だ……いやマジだけどさ)「攻殻機動隊SAC」の最終回を、地上波放送の終了を待たずにレンタル屋で借りてきて観た(ちと調べ事があったのだ)。で、仕事と関係ない感想。いやぁタチコマの最期は実写「ジャイアントロボ」や「大鉄人17」の最終回に匹敵する名場面だなあ――って話は措いといて、最終回で対面した「笑い男」と草薙少佐は、本物の「笑い男」自身の意志をも超えて、彼をクールな劇場型犯罪者、逆説的ヒーローと見なし、別に彼に洗脳されたわけでもないのに、彼による政財官界の不正指弾に便乗する第二第三の「笑い男」が現れたのは一体なんなんだ? と問答する。いちいちジョイスだの大沢真幸だのの社会学用語を難解に引用しながら「笑い男」自身にも理解不能とか言ってんだが……おい、そりゃそんな難しい話じゃなくて、要するにこういうことだろ、つまり、人間ってのは社会的動物だから単独では生きられない、で、いかに世がバラバラの個人主義と分衆になろうと、普遍的な「正しい」「善い」「カッコいい」ものを志向する心っては不滅で、それゆえ群集は「笑い男」に便乗、自ら第二第三の「笑い男」になろうとした、ってことじゃないのか? と。
無論、それは転がし方次第じゃファシズムにもなる。群集心理ってのは怖いもんだ、が、それに陥ってる当人は、その時は、命令されたわけでもなく「正しい」「善い」「カッコいい」ことをやってるつもりだったりする。