その後の錬金術師 ヴァイマール十番勝負
映画ハガレンはナチス前夜ワイマール共和国時代のドイツが舞台、というので「これは見なければ!」と思ってたが、終映間際でようやく新宿ピカデリー行ってきた(狭い)。
やはり弟可愛いよ弟ハアハア……じゃなくて、「こっちの世界」の方での弟の空似のアルフォンスが、至っていい奴なのに、至っていい奴のままナチスに協力してるというのが不気味でナイス。そうそう、良いも悪いもなく、そういう時代だったのだ。
フリッツ・ラングを登場させたのはやはりうまかった。もっとも、話の舞台が1923年なんで『メトロポリス』撮る前なんだよなぁ……。
1923年のワイマール共和国といえば「コーヒー一杯飲むのにトランク一杯の札束、飲み終わったらトランク二杯分の金額になってた」という激烈インフレという実にわかりやすい時期だ。
その後ヒンデンブルクの大統領就任レンテンマルク発行やドーズ案の導入で経済は落ち着き、1928年頃までは相対的安定期で、この間(1926年)『メトロポリス』も撮られてる。
さらにその後、世界恐慌以降、ナチス躍進の共和国末期となるわけだが、わたしはこの末期が特に興味深い。ナチスはかろうじてまだ野党で反体制、ナチスと共産党の街頭闘争が熾烈化した時期で、しかし一方で奇妙な退廃が漂い、思想も科学も消費文化も百花繚乱。
と、いうわけで、こんなエドワード・エルリックは嫌……じゃないかも
- 元祖肉屋の殺人鬼フリッツ・ハールマンと戦うエドワード・エルリック
- ハイデガーと実存哲学についてどつき合うエドワード・エルリック
- その後ハンナ・アーレントにハイデガーの私生活を教えられるエドワード・エルリック
- ベンヤミンと一緒にハッシシ吸ってトリップするエドワード・エルリック
- ブレヒトにそそのかされ文壇バーへナンパに行くエドワード・エルリック
- そこでマレーネ・ディートリッヒに逆ナンされるエドワード・エルリック
- さらにレニ・リーフェンシュタールに肉体美を賛美されるエドワード・エルリック
- しかしフロイトに錬金術も性欲だと精神分析され怒るエドワード・エルリック
- なぜかコンラート・ツーゼに電子頭脳を作ってもらうエドワード・エルリック
- で、フォン・ノイマンに人工知能プログラムを組んでもらうエドワード・エルリック
――さらにチェコへ越境してカレル・チャペックとロボットを作るエド、とかキリないや。いや、いっそSS(←親衛隊ではない)に書こうか、って、一体誰が読むんだよ……