電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

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とりあえず今の自分にできる仕事は、多様な物の見方の一解釈を示すことと、若者が「今が幸せ」と思ってしまう日本というシステム(終身雇用が建前で、30歳過ぎて独身親元住まいでも文句は言われず、空気さえ読んでりゃ場から脱落はせず、ケータイとネットで孤独は紛らわされ、100メートル歩けばコンビニがあって24時間欲しい物が買える環境?)の足元を認識し直す、という程度だ。
――以上のような感慨もあって、このブログでは最近の自分の執筆仕事のことを挙げてなかった。でも、一緒に仕事をしている友人、仕事上関わった人たちには、自分なりの指針をはっきり持とうとしている人も少なくない。
それで、一方の自分は何やっていたか晒しておく。

最近関わった主な仕事

○雑誌『For Everyman(フォー エブリマン)』
http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20111023
畏友・河田拓也君の編集による雑誌。当方は竹中労『庶民列伝』(isbn:4380072169)の書評を寄稿。かなり前に書いた物だが、創刊号を貫く趣旨――震災後の状況を踏まえて、今の日本人が忘れかけている本来の戦後日本人の生活実感とそこにあった意識を見直すこと――に沿ってボツを免れたというのなら幸い。
○同人誌『ULTRAMAN BEGINS 2011』
月刊『ヒーローズ』(http://www.heros-web.com/)の創刊準備号として夏コミケで配布された冊子。当方は『ウルトラQ』〜『帰ってきたウルトラマン』の脚本に関わった上原正三氏のインタビューを担当。といっても3Pの短い記事。6年ぶりに取材した上原氏からは貴重な歴史証言が続出。同席した八木毅氏(深夜枠の『ULTRASEVEN X』シリーズ構成などを担当)らの意気込みも頼もしかった。金がなくても環境が整ってなくても、作りたいものがある人間は作りたいものを作る。
○新書『中国人の腹のうち』(isbn:4331515729
京劇や漢詩を専門とする中国文学者・加藤徹先生の談話をまとめたもの。異民族と地続きで対峙する大陸国家の環境が漢民族に与えた影響(町も家も城砦で囲む。いざとなれば土地を捨てて逃げる)、愛国デモを男女の出会いの場に活用したり日本と大差なくなってる若者像など、随分いろんな話を聞かせて頂きました。
○文庫本『時代の流れがすぐわかる「業界再編地図」』(isbn:4569676901
金融から宗教まで日本のあらゆる産業と文化に関わる企業、団体の集合離散の変遷を追った本。当方は電力、鉄鋼、製紙、自動車…などの明治期から現在に至る合併・分裂の歴史を担当。日本の電力会社の独占体制のいびつさ、1980年代末の日米構造協議の各産業への影響など、調べてて地味に勉強になった。
○文庫本『こんなに違うよ! 日本・韓国・中国の会社』(isbn:4569677207
昨年刊行されて増刷9版まで行った『こんなに違うよ!日本人・韓国人・中国人』(isbn:4569675328)の姉妹編。中国や韓国の企業には、ずさんな安全管理、日本や欧米製品の模倣などツッコミ所も多い。しかし、迅速な意志決定や転職の多さなどのフットワークの軽さが日本にない強みなのも事実。隣国を見ていれば、良くも悪くも翻って日本の企業体質の長短が見えてくる。
○書籍『「仏」と「鬼」の謎を楽しむ本』(isbn:4569796095
○書籍『ブッダの秘密』(isbn:4569796842
○書籍『「聖書」と「キリスト教」の謎を楽しむ本』(isbn:4569799590
執筆のため調べていて痛感した点を述べると、まず当たり前と言えば当たり前だが、日本は大乗仏教の国なので、やはり「世界の仏教」を論じる場合は大乗仏教の立場で書かれた本が多い。あと、多くの資料でバチカン市国の成立は1929年と書かれているが、なぜこの時期にイタリア政府がバチカン自治を認めたかは説明されていない。当時のイタリアはムッソリーニ政権で、カトリック聖職者には反共産主義のためファシスト党と一時的に協力関係だった者が結構いた側面は無視されている。
なるほど、気づかない内にチョコチップ入りゼリー箱のある一面だけは見えなくなっていることも、たまにはあるようだ。