電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

葦原骸吉が選ぶ2011年度の「空気読まない大賞」

日本社会では「空気を読む」ことが何より美徳とされる。が、以前も述べたけれど、わたしは「空気を読め」というのは、結局は人に同意を迫る暴力だと思っている。
そして、狭い世間で目の前にいる身内だけの「空気を読んだ」ために、より広い視野では、崖から落ちる場合もあり得る。
そんなわけで、いろいろな意味で日本も危機に陥った本年「あえて空気を読まない」ことによって偉業をなした英断の人物(栄誉部門)を表彰するとともに、逆に目先の空気の奴隷となって恥をさらした人物(ワースト部門)をやり玉に挙げたい。

「空気読まない大賞」(栄誉部門)

まず、栄誉部門はこの人……オリンパス前社長マイケル・ウッドフォード氏。
オリンパスの幹部たちにとって、粉飾決済の問題は「わかってても言わない話」で、問題にしないことが「空気を読む」ことだったのだろう。が、この正直な英国人社長は、日本人の身内にしか通じない空気を読まなかった……というか、かようなマレビトでなければ問題の指摘ができなかった点に事態の深刻さがある。
ウッドフォード氏のインタビュー記事を読むと、戦後の日本企業がコンセンサス造りで発展したのを賞賛しつつ、そのコンセンサスが今では逆に会社を縛っていると指摘してる、日本人としては「嫌ないいこと」言うなあ、という気分。
じつは、わたしの父はかつて、地元の工業高校を卒業後、長野県の諏訪にあるオリンパスの工場で働いていた。
ときに1997年末、定年退社の手続きのついでに上京してきてわたしに会った親父は、「山一証券が潰れるご時世なんだからお前もちゃんとした所で働かなきゃダメだ」と言った。ところが、そのオリンパス山一証券と同じく会計情報の「飛ばし」をやっていたとあっては、親父も浮かばれまい。

「空気の奴隷賞」(ワースト部門)

そして、ワースト部門はこんバカ者……九州電力会長・松尾新吾死。
東電もオリンパスもだが、黒幕は会長、社長は簡単にクビを切られる。
九電の「原発賛成集会やらせ問題」については以前も書いた。
せやろうな、エラか人はみーんな全員、原発ば続けないかんと思っちょるやろ、松尾君のまわりの友達だけはな。
ほんで「やらせ」問題の発覚後、どげん見ても佐賀県古川康痴事の内意があったんはバレバレやのに「佐賀県知事は関係なかばい。俺ら九電が勝手にやったこつばい」の一点張り。九電本社と佐賀県庁の半径3メートルの狭い世間じゃ、それが「空気を読む」なんやろうけど、身内の空気は読めても、その外の空気は無視かよ。さすが、福岡が九州王国の首都やと思うて九州の外は見らん博多もんばい(※追記:松尾君は長崎出身らしいが、まあ福岡在住なので)。
あ、改めて言うちょくばってんね、松尾君も古川君も「今は世間を敵に回してんが、オレは玄界原発の早期再開と、今後も原発推進が日本のために必要と思うけん、あえて『やらせ』ばやったったい!!」とか、本気で思うちょるなら、ハッキリそげん言え! そげんな信念もなかくせ目先の調子だけ合わせても、恥かくだけばい。
……といったところで、九電では狙ったようにちょうどこの寒い時期に原発を全停止させて、九州人は電力消費5%節電が課せられちょるそうで難儀ですが、来年は本年よりはマシになると思いたいので、ともあれ皆さま良いお年を!!