電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

『古事記』の時代にサザエさんはいましたか?

なんでも日本会議によると、日本の模範的な家族像はサザエさん一家であるらしい。

日本会議「理想はサザエさん一家」啓発 24条改正巡り
毎日新聞2016年11月3日 02時30分(最終更新 11月3日 12時49分)
http://mainichi.jp/articles/20161103/k00/00m/040/159000c

阿呆か。
いかに憲法を改正しようとも、かつてのような大家族は復活しない、こんなもんは完全に「絵に描いた餅」である。理由は、産業構造の変化を完全に無視してるからだ。
日本で昭和の中ごろまで家族を大事する価値観が強かったのは、戦後の個人主義に毒されていなかったからとかいう精神論の問題ではなく、まず大多数の世帯は農家や個人商店のような「家業」であり、そこでは家族は最小にして基本の「職場」だったからだ。親族経営の農家も個人商店も、働き手として子どもとじいさんばあさんが必要だったのである。
そうした「家業」がすたれて総サラリーマン化すれば、大家族の必要も意義もなくなるのは必然ではないか。本ッ気で大家族に戻したければ、今の日本の経済的繁栄を捨てて農村社会に戻れよ。
つーか、よく考えたらサザエさん一家自体、戦後民主主義のもとでできた、せいぜい70年ぐらいの歴史しかないフィクションである。
それまで1000年以上も続いてきた日本の伝統的な家族ってのは、武士でも農村でも家督(農地)を継承する長男のみがエラく、次男以下は状況次第では家から捨てるものだった(この辺の話は輿那覇潤の『中国化する日本』(isbn:4163746900)にも出てくる。なんと、昭和30年ごろまで農村では長男でなければモテなかった!)
日本会議とその支持者は、神武天皇は実在したと主張したり、『古事記』『日本書紀』の内容が大好きなのだから、戦後のフィクションでしかないサザエさん一家などではなく、神代や古代天皇家の家族構成を理想としないのか?
天照大神は夫のいないシングルマザーで、逆にスサノオも男だけで子ども作ってたな(きっと神代にはiPS細胞があったのだろう)、大国主命は一夫多妻ハーレムじゃねえかw
さすがに神代は別としても、神武天皇以降の人皇時代だって、兄妹姉弟で近親相姦や一夫多妻の方こそ日本の神話が描いてきた美しい「伝統」だぞw

絶対に当たる予言 10年後にドヤ顔させてもらいます

以前も述べたが、現在進行している少子化も産業構造の変化が原因にある。
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20160404
少子化と非婚化の原因は若者の貧困だから、賃金を高くすれば少子化も非婚化も解決すると主張する人は少なくない。確かにそれも大きな側面だ。
しかし、そう主張する人の多くが見落としているが、合計特殊出生率が戦後最低値を更新した「1.57ショック」は、バブル経済絶頂期の1989年だ!! 第三次産業中心社会に移行すれば少子化が進むのはどこの国も通ってきた道なのである。景気が回復しても、それだけで出生率が飛躍的に改善することは多分ない。上記の説明でも触れたが、少子化の打開策は「家業の復活」しかないと思う。
だから、ここでひとつ「絶対に当たる予言」をしてやる。
憲法24条が改正されても、絶対に少子化は改善しない!!
現状の自民党案どおりに改憲が実現したとして、その改憲を推進した人たちは10年後に必ず、「あれぇ、なんで出生率が伸びないの?」と思う。そして、その理由を「改憲されてもいまだに日本国憲法時代の間違った個人主義の価値観に毒された世代がうんぬん」という言い訳で正当化する、ここまでテンプレ。
――もっとも、この予言は、春が来たら「必ず桜が咲くぞ」とか、夏が来たら「必ず台風が来るぞ」と言うようなものだから、予言ですらないがw
もちろん、改憲と関係ない別の理由で少子化が改善すりゃ、そっちの方が良いに超したことはない。