電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

「バブルすごい」のディトピア

日経新聞の正社員様によると、デフレ不況は若者が消費しないせいらしい。

インフレ知らず悲観的…物価2%、ゆとり世代が壁  :日本経済新聞
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei.com/article/DGXLASGF24H0E_V21C16A0SHA000/

阿呆か。
日経新聞の正社員様は西友スーパーとか行ったことねえんだろうなあ。西友じゃさも自慢げに「6ヵ月以上値上げなし プライスロック」ってポスター貼ってるぞ。
http://www.seiyu.co.jp/campaign/pricelock/index.html
まさにアンチインフレの権化!! 西友アベノミクスに真っ向から敵対してるじゃねえかw
当然ながら、西友スーパーの愛用者のメインは「若者」ではない、30〜60代の主婦のおばちゃんが大多数である。今やバブル世代含めて標準的な専業主婦はみんなデフレ支持なんだよ!!
前からずっと思っていたのだが、バブル世代が自慢げに口にする「俺らの若い頃は高級車や高級ブランド品にバンバン金使って消費してたのに、今の若い奴は消費しないからケシカラン」という自慢話は、最低のクソ言説である。
それ、戦中派世代の「俺らの若い頃は支那でチャンコロ兵と殺し合いしてたのに云々」や、全共闘世代の「俺らの若い頃は機動隊をゲバ棒でぶん殴ってたのに云々」と同じじゃねーか! で、バブル世代はそーいう上の世代の自慢説教がいちばん嫌いだったはずだろ?
そして、ここが重要なのだが、バブル世代が高級車や高級ブランド品などの高額消費に金を使ったのは日本経済のためなんて大義ではなく、自分の快楽のためだろ!! なんでそれを自慢げに威張ってんだよ?

平成生まれが聞いても信じないバブル時代の真実

昨今では「20〜30年早く生まれてバブル時代に生きたかった」とホザく若者もいるそうだが、以下は1970年生まれでバブル経済絶頂期に20歳だったわたしの経験的証言である。
(1).バブル時代にも貧乏人とブラック企業はあった
(2).バブル時代のオタクは人間以下の最底辺の身分だった
(3).バブル時代の大学と企業は体育会系帝国だった
(4).バブル時代にはすでに深刻なモテ格差がはじまっていた
(5).バブル時代の日本人は海外で嫌われていた
まず(1)、わたしが高校卒業直後の1989年に最初に就いた仕事は福岡市内の新聞配達員で、配達のみ集金業務なしの契約だったが、本来ならば専業職員がやるべき広告チラシ折込などの雑務もやらされ、実働時間は集金業務ありの学生配達員と同じだったのに、賃金は集金業務なしの金額だった。しかも1日10時間以上労働はザラで、残業代は出ない。大企業ならいざ知らず、地方の中小の事業所なんて当時もそんなもんである。
(当時は「ブラック企業」という言葉と概念がまだなかっただけだ)
次に(2)、一部で言われ古されているがバブル絶頂期の1989年には、幼児誘拐殺害藩の宮崎勤が逮捕されて、一気にオタクバッシングが広まった。
バブル崩壊後の長期不況でお金のかかる娯楽(高級車、高級ブランド品、ゴルフ、ワイン、料亭、ディスコを貸切にしてナンパなパーティとか)がすたれた結果、2010年代の現在、「消去法のように」若者の娯楽としてはゲームやアニメや漫画の地位が向上した。しかし、1989年当時は、お金のかかる娯楽の方が圧倒的に主流だった。
現在、ディスコを貸切にしてナンパパーティするウェイ系リア充とオタクの身分差が「貴族と下級市民」ぐらいの感覚なら、1990年当時には「皇帝と奴隷」ぐらい感覚のだった。
続いて(3)、1990年代後半以降のITの普及で、現在でこそオタク向けのデスクワークは圧倒的に増えた。ところがバブル時代当時、ビジネスは圧倒的に「夏でもネクタイスーツ」で、「大きな声を張り上げ」、「手で触れる実体のある商品」を直接に取引先に営業するのが中心で、企業ではそういうのに向いてる人材がいちばん重宝された。つまりはバリバリの体育会系である。当然、ホリエモンみたいな奴なんてまだ影のような存在でしかない。当時の若者がみんなマネをしたタレントはとんねるずの石橋と木梨だ。
そして(4)、バブル時代とえいば、『POPEYE』だの『ホットドッグ・プレス』だの『MEN'S NON-NO』だのの雑誌で流行のファッションや女子にウケるオシャレな店など、「モテマニュアル」を押さえてないと相手にされないとしきりに喧伝された時代だった。結婚相手の条件は高身長、高学歴、高収入の「3高」なんて言われた時期。あと、「20代女性の人口がXX万人も男性より少ない」なんて報道もよく聞いた。
この当時に比べれば、若者の貧乏がめずらしくなくなって無駄な見栄を張る必要がなくなった現代の方が、ある意味では健全に思えてならない。
最後に(5)、今の日本で「爆買い中国人」がよくコケにされているが、あれはバブル時代、フランスでシャネル本店の前に行列をなした日本人買い物客とかの姿とまったく同じである。日本人がニューヨークでロックフェラーセンターの前の土地を買い取ったときなんざ、アメリカじゃひどい憎まれようでしたよ。
――上記のようなバブル時代の真実って、テレビの昭和回顧ネタとかじゃ絶対に語られない。ウケないからだろうね。結局みんな「見たいもの」しか見ない。「日本スゴイ」ネタと同じだ。