電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

凶悪犯に善良な新妻は「豚に真珠」か

年明け『週刊文春』と『週刊新潮』を読んでちょっと印象の残ったのが、宅間守の獄中結婚の記事である。この凶悪犯との結婚という、傍目には理解不能な奇行としか思えないことをやってのけた女性は、「せめて彼を改悛させて人生を終わらせてあげたい」といった意志から、そのような決意に及んだのだという。
宅間守は、精神鑑定では責任能力がありそうと判断されながら、どう考えても更生不可能としか思えない態度を取っている。つまり正気のままの確信犯での反社会犯罪者である。「あいつは例外的なキチガイでした」といって葬り去ることもできない。真っ当な人間社会にとって見れば、もっとも厄介な人間だろう。
で、宅間と婚約したその女性は、そんな宅間に、人並みの家庭の暖かみや幸せを教えることで、自分の行為がいかに人として異常であったかを自覚させたい、という考えらしい。
なるほどこれは真摯なヒューマニズムであるとも思える。しかし、真摯なヒューマニズムだからといって現実に通用するかは難しい。
記事の論調には、とりあえず、あんな凶悪事件を起こした宅間が善良な女性と結婚して人並みの幸福を得ようなんて許されるのか、というような疑念が漂っている。意地悪く見れば、そこに凶悪犯が幸福を得ることへの嫉妬や、凶悪犯を糾弾する正義に酔った視線を見出すこともできなくはないが、まあ世間一般人として至極もっともな感想だろうとも思う。