電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

で、ちょい今さらながら『映画秘宝』の話

昨年、タランティーノを親友のように慕うウェイン町山を中心に、「キル ビル」を大プッシュしてきた『映画秘宝』に、「私が敢えて『キル ビル』を否定する理由」というコラムが寄せられていた。
内容はほぼ予想通り。曰く、タランティーノは確かに映画オタクだったが初めからウケ狙いではなかった筈だ、最近は皆「オマージュ」って言葉を安易に乱発しすぎ、映画本編より元ネタ探しで笑うようなのが目的の映画でどうする、作り手がオタク好みな元ネタしか観ないまま自分の作品を創るばかりではジャンルが痩せ細るばかりだ……といった指摘だ。今さらながら、至極まっとうな意見である。
と、このような文章が「キル ビル2特集」の中にあることを姑息なアリバイ工作(「いや、僕らだって最低限わかってやってるんです」というセルフツッコミの言い訳)と見なすのはたやすい。
だが、本来の『映画批評』のスタンスってのは、こういう、自分自身のダメなオタク性に重々自覚を持ちながらオタクをやってく、って感覚だった筈で、うっかりマニア向けな60、70年代マイナーアクション映画やらB級テイスト映画もDVDやらで採算の取れる市場を持てる世になって以来、うっかり忘れられてた初心が見えたようにも思える。
とはいえ、このようなセルフツッコミも今や巨大な資本の濁流の中では大海に砂粒を投げ込むようなものかも知れない。が、だからこそこういう感覚も忘れてはならん筈だ。