電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

ゲルマニアの二大魔女…じゃなくて二大ビッチ

その昔、ドイツに、エリーザベト・ニーチェと、ヴァニフレッド・ワーグナーという二人のバカ女がいた。前者はナチスニーチェを安売りしたニーチェ妹、後者はナチスワーグナーを安売りしたワーグナー義娘である。
この二人は、自分自身には何も無いまま、ただとにかく当時の権力に媚びて、自分の兄貴や義父を権威化することに自己実現への情熱を傾けた、ドイツの2大ビッチである。
それも、ただ単純な兄貴や義父の名声の利用、便乗というわけでもなく、少なくとも当人の主観では、兄貴や義父への純粋な思慕の愛情からだったらしい、というのがタチが悪い。わたしの考える最悪のバカウヨ女である。
エリーザベトは、兄を才媛ルー・サロメから引き離そうとしたことでも有名だが、その素人童貞の兄が女郎屋通いで脳梅毒に罹った末に頭がおかしくなった経緯の隠滅をはかったそうで、昨今の「妹萌え〜」とか言うエロゲオタには理想の最高の妹タイプの一つだろう。
ヴァニフレッドの夫ジークフリートは、親父から立派過ぎる名前を付けられた割に音楽的才能は乏しくつまらない人間だったようだが、坊ちゃん育ちの良識だけはあったらしい。
ワーグナー自身は、凄まじい浪費癖のため借金まみれで放浪を続け、1848年の革命にも参加した国家反逆者で、世間知らずの夢想家ルートヴィヒ二世に取り入って一時バイエルンの財政を傾けたとんでもない奴なのだが、死後神格化されたワーグナーの息子とくっついたヴァニフレッドは、義父がそんな奴だったことを理解してた様子は感じられない。
――と、こうは書いたが、わたしはニーチェワーグナーも不当に貶める気は無い。むしろ、そんな奴(生涯素人童貞の脳梅毒とか、借金まみれで放浪とか、そのせいでユダヤ人嫌いになったとか)だからこそ、その屈辱と汚れをバネに比類ない思想や歌劇を作り上げた情念には(あんまり共感はしないが)、人として凄い、面白い、とは感じる。
んが、上記の二人のバカ女は、その、自分の兄貴と義父の持っていた、男というバカな生き物の卑小と偉大の渾然を理解せず、卑小の部分を見て見ぬ振りし、偉大の部分のみへの献身的愛情をもって女の自分の自己実現の手段にしようとした。これがわたしには、女として最低、あちゃちゃ〜、としか言いようなく見えるわけである。