電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

関係が深まればこそ不満も溜まる

先日、地下鉄の駅でゲットした『R25』を読んでたら、同誌名物の各業界ショートコラムの「R×R」コーナーに「急速に豊かになる一方で、中国には失業者が溢れている?」という記事があった。
曰く、昨今のサッカーアジアカップでの中国サポーターの反日ブーイングの背景には、今の中国(「中華人民共和国」の略で問題ない時はわたしもこう書く。古代から総称しての場合とかは「支那」の方が適切かとも思うが)を覆う深刻な不況が関係している、との説が書かれてた。
――って、じゃあ景気が良くなりゃ日中友好ムードになるのだろうか?
「不況→社会不満が溜まる→不満のはけ口が差別に」というのは、ナチス前夜のヴァイマル時代のドイツの事例から、昨今の日本の状況を説明するのにまで繰り返し利用される原理で、実際その側面はあるのかも知れないが、事態はもうちょっと複雑じゃないかと思う。
同じ8/26発行のR25の「R×R」コーナーの冒頭には「コールセンターの海外移転はサラリーマンの危機を暗示?」と題して、現在、日本のゴールセンターの多くが人件費の安い中国に移転しており、現地では日本語ペラペラのスタッフが増えていると書かれている。
恐らく、このふたつは関連している部分があるのではないか、と感じる。
既にあちこちで言われるだろうとは思うが、昨今の中国(また韓国の)側の反日ムードの高まり、また逆に日本の反中(あと反韓)ムードの高まりは、良くも悪くも、かつてなく相互の関係が接近して、お互いの姿がよく見えるようになったこと結果の副産物だろう。
日本企業の中国進出は、まずは単なる人件費削減と市場開拓の一環だろうけど、現地の労働者は、日本人から給料を貰いつつ、それに屈辱を感じて歪んだ感情を膨らませてる可能性はある。また一方、自分らだって日本人と対等以上に有能、という意識を持てば、まあ日本をナメるだろうし……ヤレヤレだ。
「本来の仮想敵と共存しなければならない体になってしまう」ということは、屈折を蓄積させる。戦後の沖縄にある反米感情もそうだろうし。かく言う自分も、こっちこそ、金のない時は国産でない安い中国産の食品や日用品を買って時おり屈辱を覚えてる(苦笑)