電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

コネ・業界・人脈というブラックボックスの正体

笠原和夫『「妖しの民」と生まれきて』を読むと、彼が映画業界に入った経緯自体は、出来レースのオーディションを受けたとか、父の知人の紹介とか、ある意味裏口入学に近い部分がある。だが才能はあったし、彼は映画業界に入るべくして入ったのは紛れもない事実だろう。
コネ文化と言えば聞こえは悪い。若い頃は、何の業界にせよ、能力があるのに仕事にありつけない人間がいる一方、顔見知りだから仕事の話が回ってきた、なんて感じに、人脈で業界が回るのはおかしい、と思っていた。しかし、この歳になると、業界がコネで回るのが仕方ない理由も、自分なりに少し理解できてきた気もする。
例えばの話、今度、古本のネット通販サイトを作ることになり、スタッフを集めることになったとする。で、前に一緒にラーメン屋のランキングサイトを作る仕事をした事のあるA氏と、赤の他人だが古本のネット通販サイト作りの経験があるというB氏がいたとする、ラーメン屋のランキングサイトと古本のネット通販サイトでは全然別物だ。しかし、とりあえずはA氏に話が回ってきてしまうのである。それが安全策だと考えるのだ。
わたしが今やってる仕事がずばりそうなのだが、最初に自分のところに話が回ってきてから、仕様変更、スケジュール変更、内容の差し替え、といった微調整の嵐である。
依頼主とは以前にも一緒に仕事してて、知らない仲じゃないから、言わんとする希望もなんとなくはわかるし、一緒にラーメン屋のランキングサイトを作った時の経験から、わたしだったらこう調整、アレンジする、それで認めてもらう、という了解もまあ取れている。逆に、自分が依頼する側だったら、さして面識も無いB氏では、仮に古本のネット通販サイト作りの実績、知識はあっても、思わぬ仕様変更、スケジュール変更、内容差し替えの可能性が少しでもある限り、果たして対応し切ってくれるかわからないが、A氏では知らない仲じゃないから少しは無理を言ってもきくだろう、と考えただろう。
実際、わたしは今やってる仕事の一部、自分じゃ捌ききれそうにない分を、10数年来の付き合いの同窓生に頼んだが、「コイツなら多少のムリも頼めるだろう」と思ってのことで、日本ジャーナリスト専門学校卒業者の間にフリーメーソンのようなネットワークなどありはしない(笑) ってゆうか、あったら便利だけどそんなものはない。だからせいぜい身内の友人で回してそれを広げて作ろう――と、皆そう考えているのではないか……。