電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

三十六歳の地図

「ホッと胸を撫で下ろした読売、朝日、産経各新聞販売店」なんて記事見出しに引っかかる物があって『週刊文春』を読んだら、ああそうだ、今さらながら、奈良の女児殺しバカは元・新聞販売店員だった。
また元・新聞販売店員の犯罪者かよ? 数年前の池袋白昼通り魔もそうだったし、二、三年前、週刊少年チャンピオンに連載持ってた漫画家にネット上で異様な難癖をつけて、一部のウオッチャーの間で「改名問題 粘着荒らし」と呼ばれて話題になった人物も元・新聞販売店員だった。
自分も10年ばかり前には新聞配達員をやってたが、うん、確かに「一部の」新聞配達員って精神歪むっす――あ、いや、無論まっとうな新聞配達員も多い。あー、だから、元より精神に歪みのある奴が新聞配達員になると、ますます歪みが強化される傾向はあるかも、って話ね。
この仕事は、真夏のくそ暑い日でも、真冬の雪の日でも、台風の大雨の日でも、誰も起きてない時間に、一人黙々と、孤独に手をインクに汚して自転車(orカブ)に跨り走り回る。
自転車(orカブ)がこけて路上に朝刊をばら撒く悲劇に遭っても、助けてくれる人間はいない。静まり返った早朝の町、朝帰りの若い酔っ払いの楽しげな顔に疎外感を覚える反面、フフフこの時間俺だけがこの世界の住人なのさという屈折した感情を募らせる者も少なくない(俺もちょこっとそういうとこありました。ごめんなさい)。でも集金に行くと怖いおじさんおばさんに怒鳴られる。これを繰り返してると、ルサンチマンたまる人はたまります。以上、ようわからん人は、中上健次『十九歳の地図』を読もう。
――でもよぉ小林薫よ、日本全国のまっとうな新聞配達員の迷惑だぞ、アリアナ海溝より深く反省してくれ。元・同輩として小一時間問い詰めたい