電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

空中楼閣からの否定だけなら誰でもできる

JR東中野駅を利用しなくなって久しかったが、地下鉄が事故になったので仕方なくJR中央線に乗った日、久々に寄った駅前の古本屋がリニューアルしていた。
どうもここもチェーンストア系の古本屋の傘下に入ったらしい。で、上遠野耕平『機械仕掛けの蛇奇使い』が目に付いたので意味なく買ってしまった。
この人は長くブギーポップ以外書かせてもらえないのだろうかと思っていたが、それ以外の作品が増えて追いきれなくなってきている。しかし作品世界観は皆つながってるらしい。
上遠野の書くものはやはりいつものテーマである。
なまじ目端が利くゆえどうしても傍観者になってしまう人間に、当事者になれ、と説くお話。いや、上遠野自身、そういう気質があるからこそ、自戒でそういう話ばかり書いているのだろう。
主人公が無気力な少年皇帝というのもさることながら、革命を扱っていながら、さらりと、群衆はマス・ヒステリーを起こすだけであてにならんと割り切っている辺り、時代を感じる。
かつてであれば戦後民主主義的な民衆善玉史観が建前だったが、今はこういうこと書いても許容されるんだな。もっとも、ライトノベル読者がそうやって愚民思想で手早く世の中わかった気になってくれても困るんだが。
このお話、最後、主人公が帝政を廃止して世捨て人になるでなく、当事者意識を持って「上からの改革」に当たろうとするところが重要。
女からは逃げてるところは上記のガンダムの話と同じなんだが(笑)