電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

今月のBtoB仕事その2

というわけで、宝島社『この文庫がすごい!2006』発売(isbn:4796653724
わたしは「夏だ!この”この文庫フェア”がすごい!」の項を担当させていただきました。
角川文庫、幻冬舎文庫講談社文庫、光文社文庫集英社文庫祥伝社文庫小学館文庫、新潮文庫創元推理文庫、中公文庫、徳間文庫、ハルキ文庫、双葉文庫、文春文庫、の各レーベルの今夏季を中心としたフェア予定と、今年のお勧め本などをザザッとご紹介。
参加がもちっと早ければ他の企画ページもタッチできたかも知れないけど、近年、文庫に限らず新刊本をきちんと追うのをサボってたので、いい体験させてもらったと思います。
――以下、取材途中で聞いて、書ききれなかったこぼれネタ幾つか。

  • 古典名著が多いのは良いけど従来「字が小さくて読みづらい」という印象のあった新潮文庫だが、他社がフォントサイズを大きくする傾向なので、従来の8ポイント活字を8.5ポイントに、さらに9ポイントに変えているという。しかし、字サイズを大きくするとページが増え、結果単価を上げざるを得なくなり、それが読者離れの一因にもなるからと、難しい話らしい。
  • 社としては漫画誌を持たないにも関わらず漫画文庫が妙に充実している中公文庫(永井豪マジンガーZ』、ちばてつや紫電改のタカ』、藤子不二雄A『まんが道』など古典名作マンガが多い)だが、これは、中公文庫本体ではなく嶋中書店という系列の編集プロダクション(名前の通り中央公論社の創業者嶋中一族の関わった企業らしい)が手がけているという。
  • 角川は星新一筒井康隆の短編集を、内容構成一新で準備中とか。星、筒井にあと平井和正あたりといえば、70年代末〜80年代初頭、今で言うライトノベルのように読まれた作家というか、まさに角川が拓いた当時の文庫ブームを大きく支えた作家でしたな。
  • 早川文庫は取材しなかったが、好敵手(?)たる東京創元社の担当者様についでにちょっと話を聞いたら、最近は古典SFのリメイクもブーム傾向なので、創元と早川で相乗効果を期待して同じ作家を取り上げあうような傾向は実際あるという。

出版業界全体縮小傾向の中、各社とも、なんとか共存共栄で生き残りを図りたい模様らしく、実際『この文庫がすごい!』という本の企画自体、そーいう性格があるのは事実だし。
ちなみに、小学館文庫の担当者様にお話をうかがった際は、個人的趣味で、ついでに軽く、同社で単行本の出ている、山田風太郎『戦中派焼け跡日記』『闇市日記』シリーズの文庫化希望と伝えてみたが、作家の日記というのはよほどのファンでないと余り読まないですからねえ、と、やや消極的な反応。いやしかし風太郎の日記は、小説家の日記、文芸作品というより、歴史資料ルポルタージュに近い存在だから、個人的には、文芸よりノンフィクション路線の小学館文庫には逆説的に合うと思うんだけどね。
とりあえず、取材ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。