電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

サラリーマンという暗黒大陸

強いて本書の類書を挙げれば、石原壮一郎オバタカズユキの『会社図鑑』(ダイヤモンド社)シリーズがあるが、同書は、各業界の仕事の全体像と代表的な部署の仕事内容を紹介しているのに対し、『営業職大事典!』は、それを「営業職」に絞り込んだ。ゆえに、前例のほとんどない本であるとは自負している。
例によって共著だが、丸1年ぐらい執筆に関わってたら、ふと気づくと、全体の8割ぐらいはわたしが書いていた。お陰で、住宅と不動産、電力とガスなど近い業種業界の説明では、似通った内容、表現になってしまった箇所も少なくないし、鉄鋼や重機など、その業界内でさらに多様な分野がある業種業界では、どうしても大ざっぱな全体論的レベルで話が終わってしまっているきらいはあるが、これも先行類書のない中を試行錯誤で作ったゆえで、それらの点は今後の改良の余地ということで、平にご容赦を。
わたし自身にとっても、営業職サラリーマンとは暗黒大陸であった。
謙遜や諧謔抜きに、現在のわたしは、勤め人に失敗してフリーのライターをしている身分である。そのような立場にとっては、このような実用書仕事のお陰で、自分が当事者としては深く関わらなかった、まっとうなサラリーマンの世界を間接的に学習することができたのは社会人経験の補完になっていると思っている。
本書のメインの想定読者は、やはり就職を控えたリクルーターだ。
しかし実際、大学四年の息子に会社員の仕事を具体的に教えてやれる言葉を持った父親が、果たしてどれだけいるだろうか?
思えば、わたしの親父も、さる光学機器メーカー(ハッキリ名前を挙げるとオリンパス)の営業職だった。自宅の親父の机には胃カメラ電子顕微鏡のパンフがいつも置いてあったことからすると、担当は医療用光学機器だったのだろう。んが、その仕事の内実など一度もきちんと聞いたことはない。というか、父親とそういう話をする機会が持てなかった。
だから、もし本書によって、そんな日本の父親が本来やるべき仕事のひとつを代行できたのであるなら、今回は光栄な仕事だったと思いたい。