電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

ぼた山式増毛法

中高生当時、福岡の糟屋郡粕屋という土地に住んでいた(1980年代のことである)。
ここは筑豊の末席みたいな炭坑跡地であったが、当時その面影は既になく、田んぼの合間に建売住宅が並ぶだけの福岡市のベッドタウンである。(※参照)
高校への通学途中、視界の片隅には、糟屋郡志免町の竪坑(中に巨大な巻き上げ機があって、地下400〜600mから石炭を掘り上げてたという。高さ53m。昭和18年建造)が目に映っていたものだ。今では日本各地の廃墟マニアによく知られた物件らしい(先日、深夜アニメの「武装錬金」に、これをモデルにした怪工場が出てきた)。
で、その竪坑のすぐ隣には、炭坑跡地おなじみのボタ山があった。要するに炭坑で石炭を掘った時の堀りカスでできた山である。
自然にできた山ではなく、しかも軟らかい土などではなく石炭の堀りカスでできた山であるから、せいぜいが鼻毛ぐらいの雑草が少し生えている程度だった。
ところが、先日、地元の畏友から「ボタ山は樹が生い茂って、今やただの山」と聞いて、「本当かよ?」と思っていたので確かめに行ったのである。
博多駅を出てJR香椎駅で乗り換え、ディーゼル気動車(何しろ単線の非電化区間である)に揺られること十数分……20年の歳月恐るべし! 本当にボタ山は緑の山になっていた!!
久しぶりに故郷に帰ったら自然が失われてた、って話は幾らでもあるだろうが、その逆はそうそうないだろう。きっと今の地元の小学生は、あれを100年前には存在せんかった人工の山ではなく、大昔からある山と思っちょるばい。
聞くところによると、北海道の増毛町が地元の昔のバスを模したチョロQを売り出したら、頭髪の減少に悩む人々のお守りとして人気を博しているというではないか。俺が糟屋郡志免の町会議員やったら、絶対に、20年以上前のはげ山然としたボタ山と現在の緑ふさふさのボタ山の写真を並べた絵葉書ば作って、増毛のお守りとして町おこしに活用するばい。