電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

田舎物

ひぐらしのなく頃に』もそうだが、近年は、ゲームやらアニメやらのオタク分野では、『アカイイト』とか、『腐り姫』とか(これは18禁のゲーム)、とある地方都市を舞台に、その土地の伝承、地縁血縁のしがらみが絡んで怪奇的なストーリーが展開する「田舎物」(「田舎者」ではない)というのは、ひとつのジャンルとして定着しているように見える。
なるほど、未来都市もファンタジー異世界もやり尽くされて行き着いた、もっとも新鮮な舞台は、日本の地方都市なのか。
だったら、その流れで昨今のライトノベル読者の間に、何か勘違いした中上健次の再評価ブームとか起きてくれないかなあ、などと阿呆なことを夢想する。
俺が大塚英志だったら、ひとつこういう企画を立てるね。ラノベ読者に人気のありそうな漫画家引っ張ってきて、大江健三郎の『万延元年のフットボール』をリメイクっすよ!
まあ、原作者が絶対許さんだろうがw
いや、『ひぐらしのなく頃に』が面白かったというような人なら、万延元年は絶対面白いはずだ。
1960年代の四国の田舎村を舞台に、安保闘争に挫折した引きこもり青年が、村に伝わるいにしえの祭りを悪用して村の若者達を扇動して朝鮮人を襲撃! 近親相姦に陰惨な殺人! ……と書くといかにも受けそうではないか? ん、萌え要素がねえな。そこはあれだ、主人公の蜜三郎・鷹四兄弟の幼児期の回想の妹とかをあざとくクローズアップすっか。
もっとも、今のラノベ読者には、同じ大江作品なら、むしろ『セヴンティーン』とかお勧めだと思うがな。疾走する童貞テロリスト妄想! 『攻殻機動隊SAC2ndGIG』が追求しなければならなかったのは、まさにこの要素だ。テーマソングはTHE BLUE HEARTSの「英雄にあこがれて」で決まり。推薦文はぜひ本田透滝本竜彦あたりに書いて欲しいところである。