電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

スカッとする暴力、スカッとしない暴力

暇があったので、前から知人(複数)が面白いと述べていた『ひぐらしのなく頃に』のアニメを全話観る。
絵柄は一見いかにも今風の萌えアニメ(もとは同人ノヴェルゲームだが)と見せかけて横溝正史ばりの陰惨シリアスな内容、というのはあらかじめ大雑把に知ってたにせよ、話の内容を語る前に、まず残酷シーンの多さに辟易する。えんえん女の子が刃物振りますシーンばっか。
いや、話の内容自体は良いんだ。あれだけもったいぶって大量に謎の伏線を撒いておきながら、結局その合理的なオチの説明を一切放棄して、呪いだろうが祟りだろうが幼児期のトラウマだろうが関係ねえ、そんなもんに振り回されず日常を大事にして生きることが大切なのだ、というちゃぶ台返しラストは、皮肉や嫌味抜きにじつに素晴らしい。
じゃ何が辟易したかというと、まあ何だ、要するに俺は"見るからにか弱い女子供"がえんえん痛い目に遭うという映像は、見ててげんなりするわけだ。
深作欣二や、そのエピゴーネンタランティーノの映画みたいに"見るからにワルそうで実際ワルい大人の男"ばかりが相互に残酷なことやってるなら、別に構わんのである。
なんというか、暴力にも、スカッとする暴力と、スカッとしない暴力があるな、とお改めて思った。