電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

6.映画『ヱヴァンゲリヲン劇場版 破』

総監督:庵野秀明
見終わって劇場を出たあと、あまりの膨大な映像情報密度量のため「俺はいったい何を観たんだ?」としばらく頭の整理がつかなかった。が、自宅に帰り着く少し前「ああ、これは”人を感化する力は相互に伝播する”って話なんだ!」と気づく。
今回の映画では、主人公の碇シンジをはじめ、ヒロインの綾波だのアスカだのといった登場人物が飯を作る場面、人と一緒に飯を食う場面がやたらに多い。
そもそも、飯を作るのも、人と一緒に飯を食うのも、相手がいて成立する行為である。
最初はシンジもミサトも自己完結していたはずなのだが、シンジはミサトのため(しぶしぶ)飯を作るようになる。しかしミサトの受けが良いので気をよくして学校の友人のトウジやケンスケにも自作の弁当を振舞う。するとトウジやケンスケの受けも良いので綾波にも弁当を振舞う(いきなり綾波に弁当を勧めるというのはありえない)。
すると今度は、シンジに感化されて綾波が自分も料理を作り始め、綾波に対抗してアスカまでもが自分も料理を作り始める。さらに、綾波に感化されて、いつも仏頂面のゲンドウ親父までがシンジと一緒の食事に応じる(それも綾波に言われて亡き妻のことを思い出さなければありえない)。
――とまあ、めまぐるしい戦闘シーンの合間に生活描写を入れてるだけでなく、結果的に網の目のように人間の関係が連なる様子が描かれていた点にちょっと感心した。
ところで、これは恐らく既に指摘している人がいるだろうと思うが、今回の映画で劇中の海が赤いのは「前のエヴァのラストシーンのその後の世界」という設定なのだろうか?