電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

5.映画『グラン・トリノ』

監督:クリント・イーストウッド
劇中のイーストウッド演じるウォルト爺さんは時代錯誤のアウトロー気取りではなく、ちゃんと手仕事を通じて若人を教育しようとする「職人」なのが重要だ。
昔から、黒澤映画の『七人の侍』とか、山田風太郎の『幻燈辻馬車』みたいな「無用者が死に花を咲かせる」話が好きだったが、そーいうものにロマンを抱きすぎるのは往々にして、「卑小な生より英雄的な死」というバロックで時代錯誤な自己満足に陥る罠がある。
この点、本作品のウォルト爺さんは最終的には前のめりな死に方をするけれど、その前に日常の中で、ちゃんと地に足を着けつつ、男らしい意気込みも示して見せてる。
あとは以前も書いたが、ヒスパニックの不良やモン族のおばさんの描かれ方が微笑ましい。アメリカ映画なのに「ああ、こーいうの田舎にもいたなあ」と懐かしく思えるのが不思議。
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20090521#p2