電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

4&5.ルポ『ヤクザと原発』『原発アウトロー青春白書』

鈴木智彦:著(isbn:4163747702
久田将義:著(isbn:481302176X
かつて、明治の殖産興業の時代から昭和の高度成長の炭坑には、ヤクザの影があった(九州の筑豊とか典型)。作業員の手配や、事故が起きたときゴネる人たちを黙らせるためだ。この図式は現代の原発も変わらない。
原発作業員の雇用は、7〜8段階もの下請があり、中間搾取は当然。日当や危険手当は。業者によって1万5000〜20万円と差が激しい。
あえてそんな場所で労務者の元締めに義理がたく従う人間には、地縁や義兄弟関係で結束したヤクザ・アウトローが少なくない、というわけだ。

親方の忠告により、原発の根源が理解できた。原発が都市部から離れた田舎に建設されるのは、万一の事故の際、被害を最小限にとどめるためだけではない。地縁・血縁でがっちりと結ばれた村社会なら、情報を隠蔽するのが容易である。建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎でなけらばならないのだ。『ヤクザと原発』(226p)

原子力産業は安全対策や雇用条件など明文化されないグレーな部分が多く、グレーな仕事には結局ヤクザが介在する余地がある。
一見ヤクザは前近代的な存在に見えるが、実際は近代の方がヤクザを必要としてきたのだ。実際、最大の暴力団山口組は昔からの博徒テキヤ系の組織ではなく、ハイカラな港町・神戸の港湾労働人夫の元締めだった。
近代が進んでもなお、ヤクザがなくならんのは無理もないのである。